おねだりと報酬

・作

私は子供を産んで間もなく夫を失い、子供を育てながら必死に仕事を続けていく日々だった。稼げど、息子の健太郎(けんたろう)のほしいものを買ってあげることもできない日々。ある日、パート先のお店のオーナーである男、太田(おおた)さんに一つの提案をされる。

今日もパートを終え、家に帰ると私は一人息子の健太郎の面倒をみる必要がある。

夫はこの子が産まれて間もなく、死別してしまった。この子を育てる必要があるため、どうしてもフルタイムの仕事はできず、パートで日々をしのぐのが精いっぱいだった。

「ママ、ゲームほしいなぁ。みんなやってるから、僕話に混ざれなくって」

息子はある日、突然そんなおねだりをしてきた。通帳を確認するが、もちろん買ってあげる余裕なんてなかった。

「ごめんね…」私は息子にそう告げた。

 

*****

翌日のパートの時、そんな話を同じパートさんとしていた。

「一応中古という手もあるけどねぇ…」「詐欺とかもあるし怖いわよねぇ」

「そうです、よねぇ…」

今の稼ぎじゃなかなか厳しい。現実に打ちひしがれているところに、一人の男性
が入ってくる。

「失礼、売り上げの定期確認に来ました」

そう言ってパートさんの一人を捕まえていくのは、ここのオーナーの太田さんだ。私たちより一回りほど年上で、かなり整った顔立ちの男性だ。

「誰か来てほしいんだけど。…君、お願いできますかね」

私のほうを見てそう言う。私は「はい」と返事をして同行していく。

 

*****

「さっきの話、聞いていたよ」

太田さんは穏やかに微笑んで私にそう言ってきた。

「あれ、売り上げの点検じゃ」私が言いかけると、太田さんは微笑み私にこう言った。

「ゲーム機くらい買ってあげますよ?一つ、お願いを聞いていただければ」

「お願い?」

そう言うと、太田さんはオフィスの鍵を閉める。がちゃり、と鍵の閉まる音が響くと太田さんは私に近づいてきてこう言った。

「あなたの話は聞いてまして。お子さんを一人で育てているとか」

「…え、ええ。そうですが」

「私、あなたの顔がとても好きなんです。何より悲劇的な運命にもかかわらず、懸命に努力して子供を育てているその姿も。素敵だ…」

「あの、どういうことですか」

「私と、交わってください。そうすれば、ある程度の報酬は弾みましょう」

私は言葉の意味が理解できなかった。しかし、脳裏に浮かんだのは健太郎の声だった。

 

*****

「っああんっ、あっ、んっ」

ぐちゃぐちょと粘膜を指でいじられる音が部屋の中に響き渡る。

「ああっ、その顔…とても素敵です…面接のときから、素敵だと思っていたんです」

指を2本、3本と中に入れられ、気持ちいいところを突くように緩急をつけて指が動かされる。まるで、触手のようだ。

「っ、ああっ!あんっ、いっやっ!んんっ、きもち…っ」

私自身、お金のこともあったけれど。本当は心の奥底に溜まっているものがあった。

子供の前では何も言えなかったけど。この人は、まるでそれを見抜いたかのように私に声をかけてきた。

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