双子の幼馴染はどちらも大事な彼氏です

・作

清香(さやか)は、ごく普通の大学三年生。周りからもきっと、そう思われている。しかし彼女には、友達や両親には話せない秘密があった。大学内で有名なイケメンの双子、爽太(そうた)と快人(かいと)は幼馴染。清香は彼らの家にまで遊びに行く仲だが、本当はそれだけにとどまらない不埒な関係で…

「ねぇ、爽太くんと快人くんならどっちがいい?」
「え、絶対に爽太くんでしょ。めっちゃ優しいし面白いし」

「快人くんは割と塩対応だよね。服とかもね…ちょっと柄悪い感じ?」
「でも双子だから結局どっちもイケメンじゃーん!」
「まぁどっちも彼女いるらしいけど?」

講義室の後ろの方で盛り上がる女子集団を横目に通り過ぎながら、私は空いている席へ適当に腰を下ろした。今しがた話題にあがっていた楠木爽太くん・快人くんは双子で、私の幼馴染の男の子たちである。

「清香、珍しく今日一番じゃん」
「雨降りそうだから、早めに出てきた」
「え、あたし傘持ってないんだけど」
「普通これだけ空暗くて、手ぶらで来る?」

同じグループの友達との、他愛もない会話。流行の最先端を追うわけでもなく、ショート動画を投稿したり高いコスメを買い漁るわけでもなく。

「このレポートいつまで?」
「それ、今日」
「うっわ、終わった…」
「授業の最後に提出ならまだワンチャンある」

授業には真面目に出席し、堅実なアルバイトやサークルに通う。華やかすぎず、暗すぎず。良識はあるけど、ノリは悪くない。居心地のよい女友達と過ごしながら、清香は大学生活を楽しんでいた。

*****

「清香、帰んの?」
「うん…今日ちょっと用事あるから」

金曜日の夕方、飲み会の誘いを断って校門へと向かう。今日は両親とも仕事で帰りが遅い。そんな日は決まって、私はとあるマンションへと足を運んでいた。

「ただいま。爽太は?」
「知らん、またいつもの奴らと喋ってんだろ」

今日は清香が来てくれるって、知ってるだろうに。そう言うと快人は私の額に優しくキスを落として、部屋へあがるよう促した。キッチンから何かを煮込んでいる良い匂いがする。

「何作ってんの?」
「ハッシュドビーフ」
「美味しそう…」

ここは爽太と快人が二人暮ししているマンションの一室。ただいま、と言ってしまうくらい、もう何度も訪れている場所だ。

「あ、爽太帰ってきた」
「遅いぞお前」
「ごめんって。これでも途中で切り上げてきたんだって」

いらっしゃい、清香。今度は爽太からのハグ。幼馴染の二人とは小学生のときまで家が隣同士だったものの、父の転勤により私は引っ越した。それが偶然にも大学で再会し、また昔のように親しくしている。

「今日、泊まっていくよな?」
「…うん」
「また飲み会ってことでいい?」

二人の家に泊まる日、私は両親に「爽太や快人や他の友人たちと飲み会するから」と伝えている。大学三年で成人済み、幼馴染の彼らと一緒なら安心と、両親は咎めてくることはなかった。念の為、二人とは口裏を合わせておくことにしている。

「んじゃ、とりあえず。飯でも食いますか!」
「快人のハッシュドビーフ楽しみ」
「お前ら皿とかコップとか準備しろ」

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