アイドルの彼と心から愛し愛されて (Page 2)

「カオルくん、こっち来て」

私の声に、カオルくんが身を屈めて近付いてくれる。

ちゅっと音を立てて彼の鼻にキスを落とし、私はカオルくんに向かって微笑んだ。

「私、怒ってないよ。ちょっと怖かったけど…でも、カオルくんが私に嫉妬してくれるんだって思ったら、嬉しくなっちゃったな」

私の目を見つめていたカオルくんの瞳が、ゆらりと揺れた。

はく、と口を開いて閉じてを繰り返して、彼は唇を震わせる。

「…俺はサチのこと、本気だから。本当なんだ。こんな仕事してたら、軽いように見られるってわかってるけど…それが辛くて」

「…カオルくん」

「俺、自分に自信がないんだ。だからサチが他の男と絡んでるって考えたら、俺の方が面白くない男なんじゃないかとか、いろいろ考えて…情けないよな、男として」

カオルくんの口から驚きの言葉が出て、私は呆然としてしまう。

人気のあるアイドルグループの一員でルックスもいい彼が、自分に自信がないなんて。

そんなこと、考えてもみなかった。

そして、それに気付けなかったことを後悔した。

「情けないだなんて、そんなことないよ。私だって一緒だった…私みたいな一般人はカオルくんと釣り合ってないんじゃないかなとか、すごく不安で」

「そんなことない」

「うん。そうじゃないって気付かせてくれたのが、カオルくんなんだよ?私のこと、本当に好きでいてくれるんだって分かったから。でも、カオルくんがおんなじようなことで悩んでたなんて知らなかった。ごめんね…」

本当にごめんなさい。

申し訳ない気持ちでいっぱいになって、じわりと涙が浮かぶ。

それにカオルくんがぎょっとした顔をして、私の体を慌てて抱き寄せてくれた。

「サチ、泣かないで。いえなかった俺が悪いんだ」

「ううん…カオルくんは悪くないよ。ちゃんといってくれてありがとう。もう大丈夫だからね」

二人して寄り添って、お互いのぬくもりを余すところなく確かめるために黙り込んだ。

こんなに愛されて、こんなに私のことを考えてくれて。

なんて幸せなんだろう。

夢のような、というのはこういうことをいうんだろうな、とぼんやりと考えた。

それから、どちらからともなく唇を重ね合って。

ねっとりと絡む舌に熱い息が漏れる。

彼のまっすぐな瞳に見据えられて、どきりと胸が高鳴った。

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