幼馴染で振られてばかりの彼の寝顔が可愛くて、思わず勝手に触れちゃいました。

・作

幼馴染の瑛士は彼女に振られると私の家にやってくる。飼い猫のルルに慰めてもらうためらしい。無防備に寝息を立てる彼にちょっと触れてみたくなっただけだったのに、彼は本当は寝てなくて…

真夜中にインターホンが鳴った。

こんな時間に訪ねてくるのは彼しかいない。

「…振られた」

幼馴染の瑛士だ。

惚れっぽくて積極的なだけにすぐに彼女ができるのはいいんだけど、どういうわけか1ヶ月ほどで振られてしまうのだった。

「…酔ってんの?…大丈夫?」

「まいちゃーん…俺にそんな優しくしてくれんのはお前だけだぁ」

わたしはモニターを乱暴に切り、急いで玄関を開ける。

「もう!近所迷惑だから中入って…うゎっお酒くさ〜」

こうして振られるたびに駆け込み寺のようにうちにやってくるようになったのはいつだったんだろう?

そのせいで私は幼い頃から彼が好きだったのにもかかわらず、言うタイミングを逃しまくり、片思いなのだと何度も思い知らされている。

こんな時に自分の感情をなしにして、うまく立ち回れるくらいには開き直って付き合っているのだった。

それにしても今日の瑛士はけっこうべろべろに酔っている。

「いったい、どこで飲んできたの?」

「うん?…兄貴の家…」

「そこで泊めてもらえばよかったじゃん!なんでうちにくるのよ?」

「振られたときは、ルルに癒されないと無理じゃん?」

ルルとは私の飼っている愛猫の名前だ。

ルルをさがして部屋をウロウロと歩き回っている酔っぱらいの襟首を掴んだ。

「シャワーしてきな?ルルもそんな酒くさいの嫌いだからね」

瑛士がおとなしくシャワーを浴びている間に部屋をサッと片付けた。

なおーん、とルルが鳴いて足に絡みついてくる。

一緒に寝よう、と言っているのだ。

ふぁあっとあくびが出て、今は真夜中だってことを思い出した。

「もう眠いよね?寝ちゃおっか」

ルルを抱っこしながら、ソファに横になった。

*****

ふと目を覚ますとルルがいなくなっていた。

「あれ?ルル?」

周りを見渡すと、私がめてしまったせいで床で寝ることになってしまった瑛士が転がっている。

ルルは瑛士のそばに移動していた。

私は厚手のタオルケットを寝室から持ってきて、瑛士にかける。

スースーと寝息を立てて気持ちよさそうな瑛士が可愛くて、思わず髪をなでた。

「なんでまた、ふられちゃうかな…」

それに反応するように寝息がおとなしくなった。

かまわず私は髪を撫でながら続ける。

「…寝顔はこんなに、可愛いのにね」

昔から瑛士は女の子に間違えられることが多かった。

整った目鼻立ち、長いまつ毛にプルプルの唇。

私なんかよりずっと色っぽい。

私はそっとその唇に指を這わせた。

「…うわ…プルプルだぁ」

その時、突然パッと目を開いた瑛士と目が合い、私は慌てて手をひっこめた。

「ひっ」

思わず小さな悲鳴を上げた。

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