目蓋 (Page 3)

何の疑いもせずに、コージくんは私の誘いに乗ってきた。
適当にお茶の準備を始める。
警戒されて、立ち話になるかとも思ってはいたけど、実は懐っこい性格なのか、
母の単位が目的なのか、何故か突然不安に襲われてきた。

「コージくんってコーヒー飲めるっけ?」

「できれば紅茶がいいですね」

「ミルク?レモン?ストレート?」

母が紅茶好きで感謝した。
まったく詳しくない紅茶を母の真似事をして淹れていく。
見様見真似だけれど、それなりに様にはなっていると思う。

それに似つかわしくない、露出を強調した格好の私。
突然、家に誘い込んだのだから、部屋着なのは当然だろう。
これぐらいは普通だと思うし、自然だと思う。
むしろ、意識しているかのように着替えている方が不自然。

薄手のキャミソールにカーディガン、それとノーブラの状態。
着替える暇がなかったわけではないが、目的は“ソレ”なのだから仕方がない。
下はショートパンツに生脚。
警戒心の欠片もない恰好で、コージくんから何かをしてこないのかと私は期待している。

「ごめんね、今ミルク切らしてるみたい」

そう、コージくんは女のどこら辺が好きなのか、よく観察。
胸?脚?それともお尻?
どこに視線を向けるかを私は賭けていた。

このタイプの男は絶対に脚が好き。
そしてお尻と後ろ姿が一番好きなはずだ。
男が無言でいるときは、何かを観察しているときだからだ。
ゆっくりと互いの動きを観察するには、いい時間だろう。
突然、私が振り返ると驚いたような顔をしていた。

「レモンでいいかな?」

笑いかけると、コージくんは頷いて、ぼうっとした顔をしていた。
予想外な反応だけど、私は知っている。
じーっと見つめている時に突然、観察対象の者が予想外の動きをすると驚いてしまうものだ。

茫然としているコージくんと見つめ合っている私。
それに気まずい雰囲気を醸し出してみる。
男女に言葉なんて要らないと思うのは、私だけじゃないはず。

だって、私とコージくんの共通の話題なんてあるわけがないじゃない。
あるのは男と女で、二次性徴を迎えた証しである欲望だけ。
伏せられた目蓋が見つめる先が、コージくんの目的の“モノ”なのだと思う。
下着を着けていない所に目がいってしまうのだろうけど、それは本能だから仕方がない。

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