最高の恋の手引き (Page 2)

「岡崎は責任感あるから任せて正解だったよ。社員からの信頼も厚いからコンサルみたいなことしてるだろ」

「買い被りですよ、大したことはなにも。話聞いてるだけです。恋愛相談が多いのに、自分の恋愛は苦手というか…」

今まで誰にも言ったことがない正直な気持ちだった。主任相手に弱音とか呆れられちゃうかなと思い、視線を手元のジンジャエールにやる。

「じゃあ、俺が苦手克服に付き合うよ」

その斜め上を行く提案にパッと顔を上げる。竹下主任は微笑んでいる。あまりの急展開に何を言っていいか分からないまま指を絡め取られる。頬が熱い、今絶対顔赤い。絡め取られた指先にそっと唇が触れた。

*****

一体なんでこうなってしまったのか。いや、拒否はしなかったけれど。した方がよかったんだろうか。

答えのでない自問自答を繰り返す。聞こえるのはシャワーの音。ラブホテルで先にシャワー勧められて、バスローブでベッドの端に座っている。ガチャリとドアの開く音と共にバスローブをまとった竹下主任が私の隣に座る。

「後悔してる?」

「後悔というか、一足飛びの状況に頭が追いついてないだけです」

「俺は体から始まる恋愛はあり派だから。好かれる努力を惜しむつもりはないけど、すこし荒療治。ワンナイトにするつもりはないから、そこは心配するなよ?」

それってどういう意味かを聞く前に唇を塞がれた。疑問が舌の上でほどけて消えた。軽く唇を舐められ少し口を開ける。熱い舌が差し込まれ歯列をなぞられる。首に腕を回すとベッドに押し倒された。ふわふわの掛布団の上、唇が離れてほほを撫でられる。首筋を唇が辿り、バスローブの前を開かれる。

「やめる?」

そう聞かれて自分がぎゅっと目を閉じていたことに気が付いた。白熱灯の眩しさに何度か瞬きする。ぎゅっと広い背に手を回す。

「やめる方が嫌です」

そういうと照明の明度が落とされた。一気に薄暗くなったベッドの上、触れる唇の熱さだけがどこまでも鮮明だった。

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