復讐は目の前でするもの… (Page 2)

「大丈夫?打ったところ冷やそうか?」

キッチンで水を飲んでいる私の所へ颯真さんがやってきて、心配そうに私を見つめてくる。

そんな風に見ないで…。
ずっと泣くのを我慢していたのに、優しい言葉と優しい眼差しのせいで、私の視界は徐々にぼやけていた。

すると…。

「一華ちゃん?」

コップを見つめたまま何も反応しない私に違和感を感じた颯真さんが、そっと私の手に触れてきたのだ。

えっ?っと思った私が顔を上げると、颯真さんの顔がすぐ目の前にあって、お互いの唇が、もうあと数センチの距離という状態になっていた。

颯真さんの息が口元にかかって、ドクン…と心臓が波打つ。
彼の香水だろうか…、シトラスとジャスミンの香りが合わさった、温かなコットンのような香りが私を包みこむ。

それから、颯真さんはじっと私の目を見つめたまま、自身と葛藤するように小さく呟いた。

「…我慢しないといけないのは分かってる。でも…もう無理だ…」

そう言った後、颯真さんの顔がどんどん迫ってきて、優しく私の唇にキスをした。

やんわりとした温かさが唇に広がって、全身に鳥肌が立つ。
ちゅっと軽く合わせただけのキスなのに、私の頭はくらくらしている。

そして、ゆっくりと離れていく彼の唇から離れたくなくて、私は颯真さんのシャツの襟元を思わず両手で掴んで、自分の元へと引き寄せていた。

「一華ちゃん…」

「颯真さん、もっと…して?」

私のその一言を聞いた颯真さんは、ぎゅっと私を抱きしめて、再びキスをしてきた。

ちゅっ、ちゅっと軽く唇をついばむようなキスをしながら、そっと手が私の耳元へ伸びて、いたずらに耳たぶをくすぐる。

私は、やわやわとしたくすぐったさに、彼の指から逃れようと首を傾けて唇を離そうとした。
でも、颯真さんの指は耳たぶからツーッとフェイスラインを伝い、そのまま顎へと辿り着く。

そして、そっと指で私の顎を下へと下げると、軽く開いた私の口の中へ自分の舌を侵入させてきたのだ。
ぬるっとした生暖かさが口の中を支配していく。

「んっ…ん、ふぁ…っ」

テレビの音と旦那のいびきが聞こえる部屋に、キスを交わす音が混じる…。
カウンターキッチン越しに見える、床に大の字で寝る旦那がいつ起きるかも分からない。

でも、私は颯真さんの唇から離れたくなかった。
そして、気持ち良すぎて、全身から力が抜けそうになるの必死で耐えていた私の腰を颯真さんが掴む。

そこでようやく離れたお互いの唇からは、細い唾液の糸が繋がっていた。
いやらしく光る唾液を口の端に付けた颯真さんは、出会ってきてからずっと見てきた、爽やかで無害な雰囲気ではなくなっていた。

物欲しそうに見つめる目は熱を帯びて潤み、頬も心なしか赤く見える。

そんな颯真さんを見た私自身も、今までの自分ではなくなっていた。
体の中心が疼いて、どうしようもなく彼が欲しくなっていたのだった…。

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