私の好きな人がよく眠れますように
高校の時から腐れ縁の旭とちょっとしたきかっけでセフレとなった陽菜。旭のことが好きなのに、今の関係も崩せない。ずるずると関係を続けていたある日、旭が最近不眠気味と聞いて…。よく眠れるおまじないと言って誘った陽菜。好きだとは言えない関係。
何のことはない、高校の時同じ委員だった。しかもくじ引きで当たったとかいう不運で。それまで話したこともなかったのに。そこからとうとう大学も一緒。
「俺さあ、彼女にフラれて。なんとなく物足りねぇんだけど」
「それで珍しく落ち込んでるんだ。慰めてあげようか?」
とそんなことでなあなあに関係を持ってしまい、よく分からないうちにセフレに。正直なあなあとはいえ関係を持った以上恋人という認識があったのだが、旭は
「好きなやつとか彼氏出来たら言えよ。俺も言うから。後腐れなく別れられる関係ってことで」
とかなり割り切った考えをしていた。この時点で恋人と思えたら余程おめでたい頭だと思う。結果的にセフレという関係に落ち着いてしまった。
最初はただの友達だったはずなのに、この関係になってから新しく知った一面や初めて見る表情にどんどん惹かれていつのまにか好きになっていた。好きな人が出来たら言えと言われていたけれど、傷心に付け込んだ自覚がある分今更好きとは言えず、ずるずるとこの関係が続いている。
大学三年、そろそろ就活が始まる。この関係も見直しが必要かもと思っていた。
*****
「なあ、よく眠れる系の枕とか知らない?」
「肩凝りが楽になる枕なら知ってるけど。よく眠れる系って具体的にどんなの?」
「んー、寝つき良くなる系」
二人でおうち映画することになって、エンドロールを観ているとき急にそんな事を聞かれた。てか、そんなアバウトなこと聞かれても。
「そもそも枕の問題なの?マットレスとか、掛布団とかは?」
「それまで問題なく寝れてたし。なら、枕かえようかなと。最近、なんか眠れない。うとうとして、また起きて、本とか読んでうとうとして、また起きてって感じ。俺、活字読むと眠くなるタイプなんだけどなぁ」
そう言えば高校の時あった読書週間で小説片手に一人ウトウトしてたな。しかし、眠れないとなると一般的には…
「ホットミルクとか、あったかくなるアイマスクとか、あとはアロマとか?お風呂とかサウナもいいっていうよね。ストレッチとかで身体温めるのが効果的とか」
「大体やってるけどイマイチ。最悪薬とかあるけどさあ、あんまそういうのに頼りたくないというか。ああいうのって癖になるっていうし。変な効き方する時があるって聞いたな」
それは確かに。いくら眠れないって言っても、私だって薬に頼るのはなんとなく抵抗がある。うっすらと隈が出来ている。私にできる事無いかな…。ふとひらめいた。
「私がよく眠れるおまじないかけてあげる」
きょとんとした顔をした旭が何か言う前にその口を塞いだ。
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