私の帰り着いた場所 (Page 3)

「全部そのままにしてあるから」

蒼太は苦笑した。

「荷物取りに来い、ってメールも電話も、無視されちゃったから」

私は家を飛び出してすぐに、実家から封書を一通送ったのだ。
中身は、合鍵と、指輪。

後で考えたら、鍵は持ったままにして、蒼太の留守中に荷物を取りに来ればよかったのだ。
しかし、そのときは考えが及ばず、とにかく関係を断ちたかった。

「送ってほしいものに、このシール貼って。引っ越す前にまとめて送るから」

「…うん、ありがと…」

部屋を飛び出し、実家でしばらく泣き暮らし、蒼太からの連絡を全部無視し、半ば無理やり新しい人生を始めていた。
そうしないと、彼に戻ってしまいそうだったからだ。

彼を愛していた。
だからこそ、傷つけ合うのはもう嫌だった。

でも、何も変わらないこの部屋で、彼は何を思い、今日まで暮らしてきたのだろう…。

本棚、CDラック、小さなドレッサー。
ゆっくりシールを貼りながら進んでいくと、カラーボックスの上に写真立てがあった。

蒼太の肩にもたれかかるようにして微笑む私。
嬉しそうに笑う蒼太。
幸せな恋人同士がそこにいた。

写真立てにそっと触れると、彼が後ろから抱きしめてきた。

「なんで出ていったんだよ…」

その腕を振りほどこうとしたが、力の強さに勝てなかった。

「わかってる…俺が悪かった、ごめん…。でも、メールでも電話でも、それ言わせてもらえなかった」

「…」

「それに、実家に迎えに行ったら、門前払いされたんだよ」

え…?
実家にまで来てくれたの?
ちっとも知らなかった。

「でも、繭、来てくれた…俺たち、また一緒にいられるよね」

ハッと我に返って、腕の中でもがいた。

「ダメ…もう無理だよ…私、恋人がいるの」

一瞬、その場の空気が固まった。

抱きしめる腕の力が一層強くなり、彼が私の耳元で囁いた。

「関係ない…繭は俺のモノだから…」

吐息混じりの囁きに、私の中で忘れていた何かが呼び覚まされた。

「ダメ、離して…」

「どうして?こうされると変になる…?」

熱い吐息を吹きかけながら、耳たぶに優しく吸い付く。

アんっ…!

よろめいた瞬間、蒼太は私の両腕を紐のようなもので縛った。

そのままベッドに連れていくと、私を押し倒す。
二人で、何度も激しく愛し合ったベッドだ。

「イヤ、起こして…」

ジタバタする私の上にのしかかると、彼はキスをしてきた。
熱を帯びた唇が、額、まぶた、鼻筋、頬を愛撫し、唇に到達する。

彼は私の顔を両手で挟むと、唇を割って舌を忍ばせてきた。

昔いつもそうしていたように、私の唇は半開きになり、彼の愛撫に舌で応える。
激しく舌を絡め合い、夢中でお互いをむさぼる。

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