カクテルが紡ぐ夜

・作

結婚間近の彼氏が親友と浮気していたのをきっかけに、お気に入りのバーで失恋パーティーに参加する。元彼に対して毒を吐く様子を見て不自然に思うバーテンダー。お酒を飲み過ぎたのか、口説かれているような気がして…いつもは温厚なバーテンダーの様子がおかしい。

「バカ…」

私は一人でいつものバーで飲んでいる。いつもなら彼氏と一緒に来ているお気に入りのバーなのに。

「お客様どうかなされましたか」

馴染みのバーテンダーにも心配されるほど落ち込んでいたらしい。私は思いきって今までの事を話した。

「結婚間近の彼氏が私の親友と浮気していたの。私より可愛いからって理由で」

そう話していた自分にも、なんだがバカバカしく思えてきた。親友と浮気した彼氏への怒りが段々出て来て、今日は飲んでやろうとさえ思える。

「その彼氏さん、バカですね。いつもここでは、あなたのことがかわいいとか愛しているとか、おっしゃっていたのに」

あれ、このバーテンダーそんなこという人だったっけ。

「私はあなたほどかわいい人は知りませんよ」

お酒飲み過ぎたのかな。私は口説かれている。お酒はいつもより少ないはずだけど、今日のバーテンダーがおかしいのかな。

「お酒もっとちょうだい。今日は失恋パーティーなんだから」

「かしこまりました。ですが、お体には気をつけて下さい」

*****

「お客様、もう閉店のお時間です」

私はお酒を飲んで、眠ってしまったようだった。でも、家に帰る気にはなれないし、お酒も飲み足りない。これが、自暴自棄なんだろうか。

「飲み足らないの、もっとお酒をちょうだい」

そう言うと、バーテンダーはきっぱりとダメですと断った。

「家にも帰る気にならないの。彼のものまだあるし、いやなの」

「分かりました。帰る気がないなら、帰らなくていいです」

そういうと、彼は強く私の腕を引っ張り、バーの鍵をかけ、タクシーの中に私を押し込むと、どこかへと連れ去った。タクシーの中では、終始黙りぱっなしだったが、バーテンダーの彼の手が私の手を握っていた。

「ねぇ、どこに行くの」

「…」

「ねぇってば」

私が質問しても、無言を通し何も答えてはくれない代わりに、私の手を握る手は段々と強くなってきた。私はどうしようもなくなった時にタクシーが止まり、彼はある一部屋に私を引き連れた。

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