ヤキモチの後、仲直りエッチは玄関にて!
安倍智世(あべちせ)は一歳年下の彼氏・高篠嶺(たかしのれい)と喧嘩して現在二週間め。しかし、会社の飲み会に参加した帰り道、迎えに来てくれた彼はなんだかとても怒っていて…!?家に入るなり、浮気チェックと称して、智世は玄関で荒々しく抱かれてしまう。だけど、仲直りはなかなかできなくて…。
「ちょっ、安倍さんしっかり歩いてくださいよ!」
ほろ酔いの帰り道で私は後輩の悲鳴を聞きながら、ふわふわ上機嫌で答えた。
「ご覧のとおり、しっかり歩いてますよぉ。わざわざ送ってくれなくてもよかったのにぃ」
「いや、それ酔っ払いの常套句なんで…第一、こんなにフラフラしてて何いってるんですか!」
いいつつ、後輩はわずかに赤い顔を背けながら、私の腰に手を回してがっちり身体を支えてくれた。
確かに足元がおぼつかない気はするのでありがたいが、普段じゃありえない密着に居心地悪く、徐々に酔いは冷めてきている。
今日は会社で所属するチームでの飲み会があり、二次会まできっちり参加した私は、夜遅くということもあって気を使った後輩が送ってくれることになっていた。
というのも、普段私が二次会まで参加することはほとんどなく、その理由は…――。
「それにしても、安倍さんが飲み会に最後まで参加するなんて珍しいですよね。…もしかして、彼氏さんと別れたとか?」
「ッ別れてない!…と、思う」
反射的に噛みつき、その際に勢いよく後輩の方を向いたせいで、頭がくらくらする。
別れてはいない。ただ、喧嘩しているだけだ。
いつもなら彼氏が嫌がるので飲み会も滅多に参加しないが、今回は私も折れるつもりがなく、向こうも同様らしいので、ほとんど当てつけで飲み会に最後まで参加した。
彼氏に送った私からのメッセージは――「謝らないから」だけ。
あのメッセージに彼が愛想を尽かしていなかったら、きっと私達はまだ付き合ってるはずである。
わかりやすくふらついた私を、後輩が慌てて支えた。
しかし、その支え方にさっきまでとは違う感覚があり、私は身体を竦ませる。
「うわッ大丈夫ですか!?」
「大丈夫…ごめん、ここで平気。もう家近くだから」
「いえ、ここまで来たらご自宅までお送りしますよ。あと…安倍さん、もしチャンスがあるなら俺と…」
「――智世さん」
大声でもないのによく通る低い声に、私と後輩は同時に顔を上げて振り返った。
道の先にいたのは、Tシャツに黒のスキニーパンツというシンプルな出で立ちをした黒髪の男である。
猫っ毛の髪に埋もれそうなほど小さいその顔は、腹が立つほど整っている。ただし、眼光だけはやけに鋭い。
険のある眼差しに萎縮したように、後輩が僅かに後ずさったが、私はむしろ睨み返しつつ、彼の名前を呼んだ。
「嶺、こんなところで何してるの」
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