若い果実は感じやすい (Page 5)
早かったな、と、終電を待ちながら黒崎は気恥ずかしく先のことを思い出した。
しばらくしていないし、大好きな女の子だったのだし、と言い訳を自分の中に並べながら、身悶えるすずの声と表情を思い出してかっと顔が熱くなる。
横に並ぶすずはやや眠そうに、いまだ快楽の海の中をたゆたっているようだ。
「すずちゃん、あの…」
「はい、黒崎さん」
「…ごめんな」
「そんなこと言わないでください」
かき消すようにはっきりと言い切り、すずは最終電車の時刻表に目をやった。
次回の列車が来るまであと5分ある。
長い沈黙をどう繋ぐか、それが2人が考えるゆるぎない目的であった。
Fin.
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