今はまだ騙されていてね

・作

高校の時の先生に告ってははぐらかされ、押しに押してとうとう卒業式に根負けさせた美琴。それでも20歳超えるまでキスだけと言われていたけれど、20歳を超えても大学を卒業してからなどとはぐらかされ、我慢も限界。先生をある手を使って誘惑することに。その手段とは…

初めて告白したのは17歳の時で高三。進路指導の二者面談の時だった。担任の先生はどうしても用事があるからということで、副担だった先生との面談だった。当時新任だった先生は23。5歳差ぐらいどこにでもいるカップルだと思っていた。

「先生、好きです。付き合ってください」

「ばかなこと言ってないで、勉強しなさい。志望校もいいんじゃないか?頑張んなさい」

「私、進路より先生の返事が聞きたいんですけどー」

先生を軽くにらむと生意気だと笑われた。そこから成績の話にあっさりと話題を替えられ、私も自分の将来の話として真剣に聞かないわけにもいかず、完全に有耶無耶にされた。
二度目の告白は大学合格の報告の時だった。職員室で担任に報告して、先生にも報告したいと言ったら教室にいると言われた。その時は自由登校で、人もほとんどいないし教室も私と先生の二人しかいなかった。

「大学、受かりました。先生、好きです。付き合ってください」

「おお、おめでとう。よく頑張ったな」

「先生、好きです。付き合ってください」

完全に流されそうな告白をもう一度はっきりと口にする。このままじゃまたはぐらかされる。嫌なら迷惑ならはっきりそう言ってフッて欲しい。そりゃ、いい返事が聞きたいけど。でも、そんな風になあなあにはぐらかされて有耶無耶にされて、フッてさえもらえない。フラれたら失恋として気持ちにも恋にも区切りが一つつく。友達とカラオケでも行って、失恋ソング歌って、号泣して一区切り。

「迷惑とか受け入れられないなら、断ってください」

「気を付けて、帰りなさい」

「先生っ!」

振り返りもしなかった。本当にどうすればいいのか。
三回目の告白は卒業式の打ち上げの後だった。二次会をカラオケしよーとカラオケに移動しようとした時だった。お店を出てからスマホがないことに気が付いた。

「ごめん、先行ってて。スマホ忘れったっぽい」

と友達に言ってお店に戻ると、先生が私のスマホもって出てきたところだった。

「気をつけろよ」

そういってスマホを渡される。そこでまた同じ言葉が口から零れた。

「先生、好きです。付き合ってください」

「俺の顔見るたびにそれ言うよな」

「もう卒業して、生徒じゃなくなったんですよ。先生こそ、そろそろ返事くださいよ。いつもいつもはぐらかしてばっかり。ねえ、東吾さん?」

明らかに焦った顔をした先生。じりっじりと距離を詰める。離れようとした先生のスーツの袖をぎゅっと握り、先生の顔をじっと見た。返事位聞かせて欲しい。聞こえたのは深い深いため息だった。

「本当に仕方ない生徒だなぁ。俺の負けだ、もうお前のもんだ」

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