同窓会の罠
大学卒業間際の夏休み、帰省していた奈緒。地元にいる中学校時代の同級生から連絡があり、皆で集まろうと誘われた。普段なかなか同窓会に参加できない奈緒は、喜んで行くことにする。ところが当日集まったメンバーが男子ばかりで、少し戸惑う奈緒だった…。
「奈緒、電話よ」
母親が部屋のドアをノックする。
今どき、家電なんて珍しいな…。
しかも私が帰省中に、なんてタイミングがいいんだろう。
「もしもし…奈緒ですけど」
「あ、倉崎さん?俺!3年1組だった青山。覚えてる?」
受話器の向こう側から、明るい男性の声がした。
「あ…青山くん!?覚えてるよ~!」
青山くんはセンスがよくて、同じ中3でも少し大人っぽい子だった。
懐かしさと嬉しさと、ちょっぴり恥ずかしさの入り交じった声で答える。
「よかった!今さ、倉崎さんがこっちに戻ってるって聞いたから、プチ同窓会をやることにしたんだよ」
「え!ホントに?」
「うん。倉崎さん、なかなか同窓会に参加できないから、みんな会いたがってるんだよ」
ますます嬉しさが込み上げてきた。
帰省して暇を持て余していたので、すぐにでも、ということになり、プチ同窓会は翌日開かれることになった。
中学を卒業して以来、8年ぶりに皆に会える。
同級生たちがどんなふうに変わったのか、とっても楽しみだ。
*****
プチ同窓会の会場は、地元メンバーが店主を務める、小さな居酒屋だった。
貸し切りにできるしアットホームだから、ワイワイ騒いでも誰にも迷惑がかからない。
「わあ!倉崎さん、久しぶり!」
「なんだかすっかり大人っぽくなっちゃって」
「ますます美人になったんじゃないの~?」
まぶしいくらいの大人になった青山くんたちは、次々と賛美の声を上げながら歓迎してくれた。
お世辞とわかっていても、くすぐったいような嬉しい気持ちになる。
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