彼が先生で私は生徒

・作

二十歳の夏海の彼氏と久しぶりのデート。色々したいことはあったのに、まだ日も高い内からラブホに行くことに。いつもの彼らしからぬ行動に戸惑う夏海、更に部屋で服を渡されて。これって完全にコスプレでは?いつもとは違う環境で甘々エッチ。

今日は彼氏の亮とデート。最近忙しくて全然会えてなかったから久しぶりのデートに浮足立っていた。待ち合わせよりずいぶん早く着いたし。亮が駅から歩いてくるのを見て大きく手を振った。

「亮!」

「早いな、夏海」

「そんなことないよ、今来たところ」

嘘、実は十分ぐらい前に来ている。一度はやってみたい憧れのシチュエーションってやつだ。亮は何やら大き目の紙袋を持っていた。なんか寄るところでもあったのかな。

まあ、荷物は駅のコインロッカーに預けとけばいいし。映画もいいし、ショッピングもいいし、最近出来たカフェも行きたい。プランなしのデートだけど、特に何も言われてないしな。体動かす系は前もって言ってって言ってるし。それなりの服装っていうのがあるから。

「じゃ、行こうか」

「え、どこに?そもそもプラン決めてないじゃん」

「俺的には決めてたんだよね。まあ、早い内の方が空いてるし」

そう言って私の手を引いて進みだす。いや、急にそんな事言われても。駅前を少し折れて、路地を抜けたその先。いわゆるラブホ街とよばれる、ラブホや風俗店が多数並んでいる場所。夜は賑やかなんだろうけど、まだ日中だからか、閑散としてさびれた印象だ。

「あった、ここ」

「え、ちょっと、まだ日も高いのに」

「いいから、ちょっと予定が繰り上がったと思っとけ」

強引だ。そう押し強く来られると断り切れない私。でもこうなったら私がなんと言おうとてこでも動かないし、予定を変えることもないと知っている。

亮はやるといったらやる。そういう融通の利かないところがあるから。そこも好きと言えば好きなんだけれど。
迷いなくボタンを押し、エレベーターに乗って部屋の扉を開けた。

「…何これ、保健室みたい」

白いベッドが薄いクリーム色のカーテンに仕切られていて、消毒液なんかが入ったステンレスの棚には手洗いうがいのポスターが貼ってある。奥にあるお風呂と洗面所には薄い水色のカーテンがかかっていた。

「友達に聞いたんだけどさー、ここ電車とか病室とか色んな部屋あるホテルなんだって。割とそういうの楽しいじゃん。シャワー浴びたら、コレ着替えてきて。ゆっくりでいいよ、待ってるから」

楽しいの単語に言いようのない不安を感じる。ここにきて今更帰るなんて言えるわけなく、そもそもロクに拒否せず来た時点で同意したようなものだ。洗面所で紙袋を開く。

「マジか…」

コレを着るのか、完全にコスプレじゃん。着ないとダメなんだろうか。見なかったことにして、着なくてもいいよね。とか思った私が甘かった。

シャワーを終えて、お風呂から出ると目を離したすきに下着以外の衣類はバスローブも含め隠されてた。だからと言って下着姿で出るのはなんとなく恥ずかしく、どちらが恥ずかしいか天秤にかけた末、結局紙袋の中の服を着ることにした。

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