鏡の中の私
セフレの竹下くんはとても意地悪だ。わざと私が恥ずかしがるようなことをして、私のことを弄(もてあそ)ぶ。しかしどれだけ恥ずかしい思いをさせられても、一度快楽に溺れてしまった身体はその絡みつく沼から抜けだすことができない。
「見てください、京子さん」
「俺の指があなたのぐちゃぐちゃのナカにずっぽり入ってますよ」
「京子さんの柔らかいナカが俺の指に絡みついて抜けそうにないです」
「そんなに俺の指がイイんですか?」
「ぁ…だめ、竹下くん言わないで…」
ゆっくり、ゆっくりと男の人の太くてしっかりとした指が内壁を撫でていく。
優しくて丁寧な愛撫。
しかし、そんなわずかな刺激すら私を快楽の底に突き落とす。
「うう、だめ…いっちゃう…」
「早いですよ京子さん…俺、まだ触り足りないんですけど」
そういいながらも彼は指を動かすのをやめない。意地悪な笑みを浮かべながら、彼の指は私の中をどんどん押し進んでいく。
だめ。口ではそういったが私も欲しくて欲しくてたまらなかった。もっと気持ちよくなりたくて、また彼の指を締めてしまう。
「あ、また締まった」
「やぁ……っ、あ…」
彼はとても意地悪だ。私の反応、身体の動きについてこと細かくいわれるのは苦手…そう伝えているのに、でもそうした方が京子さんは興奮するでしょう? なんていってやめてくれない。
図星なのだ。
いかに彼の指、彼の身体に私が溺れているか。それを言葉にされると身体の芯がきゅう、と切なくなる。
私はきっと根本がMなんだろうと思う。
「ほら見て」
耳元で、わざとらしく甘ったるい優しい声で彼はいう。
薄ぼんやりとした視界で彼の指差す先を見ると、そこにあるのは全身鏡。その中には、肌は火照り汗ばんで、熱い吐息を漏らす女--私の姿があった。
*****
「や、ぁ…!」
私は勢いよく鏡から目をそむける。しかし、竹下くんはそれを許さず、私の顎に手を添えて鏡の方へ顔を向けさせた。
「ねえ京子さん。この鏡の中で気持ちよさそうな顔をしているのは誰?」
「…っ!」
「教えて?」
ぞくり。背を走る甘い痺れ。そんなこといわなくても誰かなんて彼だってわかっているはずなのに、わざといわせるのは…。
「教えてくれないの?」
「ひあ、っぁ…! まっ…そんなに…かき回し…ちゃ…」
「俺の質問に答えて?」
さっきよりも水音が増す。身体がこの状況に興奮してしまっているのだ。それは竹下くんも気づいている。
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