数年前にケンカ別れをした彼と、同窓会で再会。私のことなんてもう忘れていると思ったのに、目が合った彼は…

・作

大学生の時に付き合っていた彼と私は、大ゲンカの末に別れてしまった。それから数年後、同窓会で再会。「私のことなんて、とっくに忘れているよね」と思っていたのに、目が合った彼は嬉しそうに微笑むと、私の方に来てくれて…

来るつもりなんて、なかったのに。

 

同窓会の会場に一歩足を踏み入れた私は、大きなため息をついた。

今日は、卒業した大学の同窓会が行われ、皆と数年ぶりに再会することになっている。

会場は有名なホテルのパーティルームで、煌びやかな装飾が施され、おいしそうな料理やデザートが並んでいる。

「柚子(ゆずこ)、久しぶりじゃん!」

いきなり肩を叩かれて驚いて振り返ると、同じゼミだった女の子が笑顔で立っていた。

「あ、久しぶり」

「ちょっと、なんだか暗くない?せっかく会えたんだから、楽しもうよ!」

彼女は「みんなはこっちだよ」と言いながら、綺麗なパーティドレスを着た女の子たちの元へ私の手を引く。

どんなに大人になっても、弾けるような笑顔は当時のまま変わっていなかった。

初めは鬱々としていた気持ちがあったけれど、懐かしい話に花が咲き、気がつくと私もその集団に溶け込んでいた。

てっきり何人かは結婚しているのかと思っていたが、全員が恋人はいるものの、まだバリバリ働いているという答えが返ってきた。

「柚子、今は彼氏いるの?」

グループの一人に聞かれ、私はカクテルを飲みながら首を横に振る。

すると、仲間内の一人が、

「そういえば、さっき湊(みなと)くんを見たんだけど、すっごくかっこよかったよ!」

と、驚いたように教えてくれた。

 

湊くん…。

 

その名前を聞いた瞬間、私の心臓がキリキリと痛み出す。

 

大学生の頃、私は湊くんと交際していた。

私たちは本当に仲がよくて、毎日どちらかのアパートで寝食を共にし、いつも一緒だった。

でも、とても些細なことで、私たちは大ゲンカをして別れてしまったのだ。

きっかけは、彼が九州に就職するつもりだということを知ったこと。

私は当然のように、彼も関東で就職するのだと思い込んでいた。

どうしても、離れたくなかった。

今なら、どうして彼を温かく見送ってあげられなかったのだろうと思える。

どんなに距離があったって、一生会えないわけではないのに。私が、子供すぎたのだ。

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