君をいじめたい、ずっと、ずっと…
旦那と喧嘩して実家に帰っていた私。暇をもて余して、チャットで知り合った男性と、食事だけの約束で会いに行く。ところがそこで待っていたのは、なんとアイツだった。二人はいつしか怪しい雰囲気に呑み込まれてしまい…
「ちょっとアンタ、いつまでいるつもりなの?」
私を横目に掃除機をかけながら、母がぼやく。
「まだ決めてない。政夫が謝ってきたら帰ってもいいかな~」
ソファでゴロゴロしながら、適当に返す私。
「さっさと仲直りしなさいよ?うちは駆け込み寺じゃないんだから」
「冷たいな~。こういうときに頼れるのが実家ってもんでしょ」
*****
私は山本美冬(みふゆ)、32歳。
結婚して5年になる旦那と大喧嘩してしまい、実家に帰ってきてはや一週間。
最初は久しぶりの友人に会ったり、変化した地元を散策したりと、色々と楽しく過ごした。
が、さすがに一週間もいると、友人もいつまでも相手にはしてくれなくなる。
こうやって暇をもて余して家でゴロゴロしていると、最初は優しかった母も、そろそろそっけなくなってきた。
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あまりに暇なので、知らない人とお話してみようかな。
今まで、一応『既婚者』という自覚があったので、その手のサイトに出入りしたことはなかった。
でも、出会いを求めるわけじゃなし、男の人とおしゃべりするくらい、別にいいよね?
『あくまで気軽な会話だけ』のチャットを見つけたので、入ってみた。
すると、すぐに話し相手が見つかった。
「そっかぁ…酒癖が悪いとか、酔っぱらって帰らない、ってのはどうしても許せないことなんだね?ご主人はまだ謝ってこないの?」
同い年だというその男性は、聞き上手で話しやすかった。
「もうすっかり甘く見られてるの。それがまたムカつくのよ。『お酒を飲んでも自分を見失わない』って約束、もう何回も破られて、さすがに悲しくて…」
「それは悲しいよね。少しでも反省してちゃんと向き合ってほしいね」
誠実そうな文面に、凍った心が溶けていくようだった。
「ありがとう。話を聞いてもらえて、だいぶ気持ちが軽くなったよ」
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