兄のあたたかい手に導かれて… (Page 3)

「バカ!無理に笑ったりするなよ…本当に怖かったな…かわいそうに…」

兄は私をギュッと抱きしめた。
そして、何度も何度も髪を撫でてくれた。

「お兄ちゃん…」

あたたかい兄の腕の中で、また涙がこぼれた。
さっきは本当に怖かった。
昔、痴漢に遭いかけたときの恐怖が頭をよぎった。
城山くんは痴漢じゃなくて、酔っぱらって迫ってきただけだが、男が苦手な私には同じことだった。

色々思い出して、涙がどんどん溢れてきた。
兄は私を強く抱きしめて、言った。

「大丈夫、もう大丈夫…何も心配いらない…俺がずっとそばにいるから…」

その言葉に安心しきって、兄の胸にトンと頭を押しつけた。
まるで子供に返ったような気持ちになった。

だいぶ落ち着いてきたので、胸から顔を離し、兄の顔を見上げた。
あたたかい指先で、私の涙をそっとぬぐってくれる。

この人は、なんて優しい顔をして見つめてくれるんだろう…。
小さな頃に読んだ童話の、王子様みたいだと思った。

たまらなくなって囁いた。

「お兄ちゃん…好き…」

自分でもまさかこんな言葉が出てくるとは思わなかった。

ヤバい、ヒかれた…!?

でも兄は、優しく微笑んだ。
それから私の頬を撫でながら囁いた。

「俺もだよ、玲奈…」

兄は私にくちづけた。
私には初めてのキスだった。
鼓動が速くなり、兄にも聞こえるんじゃないかと焦る。

あたたかい唇が、私の唇を優しくついばむ。
そうする間に力が抜けて、唇が半開きになった。
舌がゆっくり入ってきた。
濡れた舌は私の舌をとらえて、絡めてくる。
映画やドラマでしか見たことのない、甘く蕩けるようなキスだった。

二人はしばらく夢中で唇をむさぼった。
あたたかくて、気持ちよくて、うっとりするような行為だ。
男の人は苦手でも、兄のことは大好きだ。
こんなことになっても、嫌ではなかった。

兄は私から唇を離すと、囁いた。

「玲奈…俺はもう止まらないよ…でも玲奈がイヤなら言って…これ以上しないから…」

じっと見つめてくる兄の瞳は純粋だった。
私を心から愛し、大切にしてくれている。

「お兄ちゃん…玲奈も…この先…知りたい…」

自分の顔が真っ赤になったのがわかる。
なんと大それたことを言ってるのか…!しかも実の兄に向かって…!

でも私も止まらなかった。
もっともっと知りたかった。
お兄ちゃんに教えてもらいたかった。

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