兄のあたたかい手に導かれて… (Page 2)
今日は、近所のM大学との交流会だ。
一緒に課外活動に参加したりして、学生同士の交流を深める、というものだ。
これがきっかけで、たくさんのカップルが生まれたようだ。
私にも初めて男友達ができた。
城山くんは、ボランティアを通して知り合った。
知的で優しい彼は、線が細く色白で、見るからに草食系だ。
だから、男っぽさを感じずに、安心して接することができた。
*****
「今日は久しぶりに飲んだな~」
ほろ酔いの城山くんは、上機嫌で隣を歩いている。
仲間同士で居酒屋で騒いだ後、一緒に電車に乗って、最寄りの駅まで送ってくれたのだ。
「ここからは一人で帰れるよ。城山くんの方が酔っちゃってて心配、フフ」
並木道の途中で、私は立ち止まった。
「え~?松村さんかわいいから、一人で帰すの心配だよ~」
「ヤダ、城山くんったら、ホント酔っぱらいなんだから~」
笑いながらも、私は一歩引いた。
彼はニコニコしながらも、強い口調で言った。
「いや、ホントに。松村さんはかわいい!」
彼の目が真面目になってきていた。
少し怖くなって、私は後ずさりをした。
「今なら言える。好きなんだ。付き合ってほしい」
さらに後ずさりをした私を、彼はぐっと抱き寄せた。
イヤ!怖い!やめて…!
なのに、あまりの恐怖に声が出ない。
腕の中でジタバタ暴れていると、彼は強引にキスをしようとした。
「ヤダ!!!」
言葉と同時に反射神経が働き、彼を突き飛ばしてしまった。
「イッテ~!」
怖い顔になって立ち上がろうとした彼を、頭からバッグで殴った。
それから一目散に駆け出した。
走って、走って、走って…
ようやくマンションが見えてきた。
階段を駆け上がると、勢いよく自室のドアノブに手をかけた。
鍵は開いていた。
「お帰り!早かったね!…ん、どうした?」
エプロン姿の兄が、片手にフライ返しを持っていて、滑稽だった。
その姿を見たとたん、今の今まで我慢していた涙がどっと溢れてきた。
「わ~ん!」
玄関で子供のように泣き出した私を見て、兄は慌ててフライ返しを置いてきた。
それから私の手を引いて、部屋に上げた。
「玲奈、どした?怖い目に遭ったか?」
優しい声で私の顔を覗きこみながら、一緒にソファに座る。
嗚咽しながらも私は、兄の優しい声に安心した。
「大丈夫…友達が…ちょっと怖くて…でも何もなかったから…」
「そいつ誰!?今どこにいるの?…チックショー!」
すごく怖い顔になって兄は立ち上がった。
「大丈夫だよ…駅の方…突き飛ばして…逃げてきたから」
私は涙を拭きながら、ちょっと笑った。
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