弱みを握られた私が、やり手営業マンのペットになった話 (Page 2)

「ちょっと!?」

驚いて声をあげると、耳元でクスリと笑う声が聞こえてきた。

「ごめんね、驚かせちゃったかな?でも、僕を無視して仕事するなんてひどいじゃないか」

そう言って彼は私から離れていった。そして今度はデスク越しに顔を覗き込んできた。

「ねぇ、僕のこと無視しないでよ。最近冷たいんじゃないかい?」

私は顔を引き攣らせながら彼を見上げた。すると桐生さんは私の手を握ってきた。その瞬間ぞわっと鳥肌が立ち、反射的に振り払ってしまった。

「あっ、すいません…。でも、桐生さんが悪いんですよ?」

半分くらい声が裏返りながら言い返した。

「私、会社内でそんな、親密な関係の人とか作りたくないんです」

「そりゃあ、そうだよね。だってバレちゃ困ることがあるもんね?」

その言葉にざぁっと血の気が引いて、一気に体温が下がった気がした。どうして?それとも別のこと?私は動揺を隠しきれなかった。

「そ、それってどういう意味ですか…」

「僕は君のことなら何でも知ってるんだよ。あんまりにも僕の誘いに乗ってくれないからさ、色々調べたんだ」

心臓がどくんどくんと大きく脈打っているのを感じた。冷や汗が流れるのを感じる。

「横領、してるよね?」

私は一瞬しらを切ろうかとも思ったけど、きっとこの人は何か確証があるのではないかと思うと黙り込むしかできなかった。

「別に責めようとしてるわけじゃないんだ。ただね、僕は君の秘密を知ってしまった以上、何もせずにはいられないんだよ。だから取引しよう」

「…なんでしょうか」

恐ろしく嫌な予感がした。

「僕のペットになって、言うことを聞いてくれれば、この事は誰にも話さないでおいてあげる。どうかな?いい条件じゃない?」

どう考えてもいい条件ではなかったが、私は渋々うなずいた。ここで断ったらどうなるか分からない。
彼は再びにっこりと笑い、ゆっくり顔を近づけ、軽く触れるくらいのキスをしてきた。

「じゃあこれからよろしくね、可愛いペットちゃん」

こうして私と彼の歪(いびつ)な関係が始まった。

*****

(金をせびられないだけ、マシなのかな…)

頭の中で低レベルな言い訳をしながら、私は言われた通りに下着をつけて仕事を始めた。

午前11時を少し過ぎた比較的穏やかな時間帯に、不意にその玩具が静かに動き始めた。

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