忍び寄る指先 (Page 2)
映画館の中に入る。
ロビーは大勢の人で賑わっていた。
若いカップルもたくさんいて、寂しくなる。
私もこんなふうにデートするはずだったのになあ…。
ため息をつくと、スタッフにスマホの画面を見せ、引き換えにチケットをもらった。
劇場に入ると、真ん中より少し後ろの、ちょうど中央に座る。
張り切っていい席取ったのになあ…。
まあ、仕方ないか。
こうなったら一人でとことん楽しもう。
あとで悟にもしっかり報告できるように。
*****
物語は、感動的だった。
許されない愛だからこそ燃え上がる、主人公たちの情熱に共感できた。
二人は、熱いキスを交わしながらベッドに横たわる。
「ダメよ…こんなこと…」
ヒロインが軽く抵抗したが、相手の男が甘く囁く。
「もう止まらないんだ…君もそうだろう?」
彼女にキスの雨を降らしながら、ドレスの裾からそっと手を忍びこませる。
「あっ…」
彼女は熱い吐息を漏らすと、体をくねらせる。
何が起きているかはっきり見えないからこそ、こちらまで興奮し始めた。
彼女に覆いかぶさる男の広い背中や、肩や腕の微妙な動きで、ドレスの中の出来事は容易に想像できた。
彼女は、熱く悩ましい喘ぎ声を上げる。
目の前で繰り広げられる官能劇に、私はすっかり酔いしれていた。
男は一度体を起こすと、ドレスをまくりながら自分の下半身をぐぐっと押しつけた。
そして、両手でゆっくり彼女の肩を押さえ込んでいく。
彼女は大きくのけぞり、歓喜の声を上げた。
私は生唾を飲み込み、凝視した。
…と、その瞬間!
左の太股に違和感を覚えた。
ほんの小さな違和感だったが、確かにゾクッときた。
…と、また、違和感が。
今度は明らかにわかった。
それは手のひらだった。
太股をサワサワと撫でている。
痴漢!?
左を向くと、眼鏡をかけた真面目そうな青年がいた。
素知らぬ顔で映画を観ている。
が、明らかにこの人しかいない。
彼の右手が、スカートの裾から入り込んでいた。
レビューを書く