美容師の年下クンが絶倫すぎた件について

・作

スーパーロングヘアを大事にしている優佳。ずっと担当してくれていた美容師が結婚し田舎に帰ることになって、後輩の大介君が担当を引き継いでくれることに。髪フェチの大介君は以前から優佳のことが気になっていたようで…。絶倫の年下クンにひたすら愛される一夜をどうぞ。

彼はいつも、愛おしむかのように丁寧に。
私の髪に優しく触れる。

きっかけが想い出せないくらい昔から伸ばしている髪。
いつも真っすぐに切るだけだったけど、いつしか少しずつ白髪が目立つようになってしまった。
思い切って黒く染めるようになったのが一昨年のこと。

それでも。
彼は私の髪に嬉しそうに触れてくれる。
鏡に映る彼の顔を見る度に胸が高鳴る。

2ヶ月に1度の時間が、私はたまらなく好きだった。
そして何より大事だった。

だけど。
秘かな想いを告げることなく。
彼は結婚し田舎に帰ってしまった。

まぁ私もその間彼氏が居たりしたんで、憧れのようなものだったんだけど。
でも、間違いなく私にとって彼との時間は「特別」だった。

「コイツなら、綾さんのこと任せられると思います」
そういって、いつもシャンプーをしてくれてた大介君に私を託して。

確かに、大介君は何年も知ってるし。
スタイリストに昇格してからも、大介君は何故か私のシャンプーを担当してくれる。
いつも彼みたいに丁寧に髪を扱ってくれるから、嫌いじゃない。
整った顔に可愛い笑顔も、嫌いじゃない。

でも、大介君は彼じゃない。
髪と一緒に2人で紡いできた時間まで、否定されたみたいで。
私の心は重く沈んでいた。

*****

とはいえ髪は伸びるもの。
2ヶ月も経つと私は彼のいないサロンに足を運んだ。
「大介君」の指名で。

「優佳さん、初指名ですね!ありがとうございます」
「初指名…そうね。これから宜しくね」

見慣れた風景に彼はもういない。
いつもよりも、雄弁な大介君。
大介君の明るい声が、沈む心に温かさを届けてくれた。

「そういえば優佳さん、お客様のヘアスタイルをブログで紹介してるんですけど」
「あ~、見たことあるよ。ヘアアレンジとか可愛かったなぁ」
「顔は出さないんで、紹介させてもらっても良いですか?」
「良いけど、まっすぐなだけってどうなの?」
「優佳さんの髪綺麗だし、スーパーロングを目指す人の参考になると思うんです」

(…綺麗って。)

さらっと言われた言葉に思わず耳が赤くなるのを感じた。
褒められると、嬉しい。
長年大事に伸ばしてきた髪だから、なおさら。

「写真は大介君が撮ってくれるの?」
「はい、あっ優佳さん連絡先教えてくださいよ。そしたら写真送ります」
「ん、良いよ」

大介君は本当に驚くほど綺麗に写真を撮ってくれて。
ブログに載せない正面の写真も何枚かくれた。

「凄く綺麗ね!私じゃないみたい。お礼、どうすれば良いかな?」
「お陰でお客さんにも好評です!僕の方がお礼しないと…!お茶でも行きませんか?ケーキも付けちゃいます❤」

気が付いたら私は、大介君と火曜の夜にケーキを食べに行くことになっていた。

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