アイドルのマネージャーは今夜も大忙しなんです

・作

若手男性アイドルデュオのマネージャーを務める荒川紗代。彼女の仕事はアイドルの2人──HARUとKEIの体や心を支えること。その一端として事務所の社長から言い渡されたのは、彼らの性欲処理業務だった。見た目も性格も正反対の男の子たち…しかも彼らにはベッドの中でしか見せない意外な一面もあって…

「それじゃぁ明日の本番、皆さん宜しくお願いします!」

ステージ上から声を張り上げる事務所の社長と、その隣で各スタッフに向けてお辞儀をする2人の男の子たち。

明日は彼らのデビュー1周年記念ライブ、そして今日はその最終リハーサルだった。私は誰もいない客席の片隅から、華やかなステージをじっと見守っていた。

「ハル君、ケイ君、お疲れさまです」
「紗代さん、お疲れ~!」
「…お疲れさまです」

アイドルデュオ『ダイアンサス』。ともに21歳の男の子、HARUとKEIの2人組。

音楽配信チャートでは軒並み1位を獲得、セカンドアルバムは今年最速のミリオンヒット。テレビや雑誌、動画サイトなどに引っ張りだこの、いま一番注目を集めているアイドルだ。私はデビュー当時から、彼らのマネージャーを務めている。

「ケイ、今日も紗代さんと帰んの?」
「…うん」

彼らにはもう一人、私のほかに田仲という男性マネージャーがついている。仕事全般のマネージメント業務の主任は彼であり、私は主に2人のサポート業務を行っていた。

「紗代さん、今日も…いいですか?」
「大丈夫ですよ」
「んじゃ俺は、田仲さんに送ってもらうわ」

ケイ君の問う「いいですか?」とは、単刀直入にいえば「今夜、セックスしてくれますか?」である。私が最も2人と親密に関わる業務、それは彼らの性欲処理だった。

といっても、粗雑に扱われているなんてことは一切なく、私も2人のことをとても大事に思っている。

「いつも、すいません…明日のライブ、今から緊張していて…」
「ケイ君のリラックスになるなら、好きなだけしていいですからね」

ぱっちりと大きな瞳にアプリコットカラーの髪色、デュオの振り付け担当で太陽のように爽やかなHARU。切れ長の涼し気な目元にブラックブルーの髪色、デュオの作詞担当で月のようにクールなKEI。

客前でのライブ後の興奮のままに私を抱きたがるハル君と、ライブ前の緊張をまぎらわすために私を抱きたがるケイ君。

「でも明日は早いから、遅くまでならないようにしましょうね」
「…はい」

ケイ君は口数があまり多くない。元より人前で目立つのが好きなタイプではないが、子役やバックダンサーの経験が豊富で芸歴自体は長い。

昔から囲っている事務所の社長の一存で、アイドルとして売り出されることが急に決まり…オーディションで選ばれたシンデレラボーイのハル君と組んでデビューしたのが1年前のこと。

「今日も…いつもみたいな感じで。紗代さんに、甘えてばかりになると思うので、先に謝っておきます…すいません」
「気にしなくていいんですよ。ケイ君がしたいように、してくれれば…」

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