同僚の性癖を偶然知ったら、オフィスで襲われちゃいました。
大手広告代理店に勤める小桜てまりには、ハイスペックイケメンな同期がいる。人気者で世渡り上手、大口契約もバンバン取ってくるやり手営業マンの桜木シュウ。何かとてまりに絡んでくる彼に密かに憧れていたてまりだったが、告白なんてそんな勇気は持てないまま。そんな時、てまりは偶然彼の『秘密』を知ってしまい…
「桜木さん、今日もイケメンだよねぇ」
「一人だけ光り輝いてるわ」
「自然光すら味方につける男、さすが」
「ねぇ、さっきから意味分かんない」
昼休み、社食で同僚二人と話に花を咲かせる。今日の話題は、私の同期であるハイスペックイケメン・桜木シュウについて。
まぁ、今さっき歩いてるの見かけたからなんだけどね。
「てまりはさぁ、桜木君に興味ないの?」
「そうそう、結構仲いいですよね?」
「別に仲よくないよ。ただの同期ってだけだし」
「だって桜木君だよ?イケメンだし背高いし、スーツだってブランドものじゃん?時計もいいのしてるし。ジム通いしてるらしいから、脱いだら絶対いい体してるよあれは」
「凄いチェックしてるんだね…」
「そりゃあ、みんな隙あらば彼女の座狙ってるわけだし、情報収集は欠かせないですよ」
「てまりは、もし桜木さんにいい寄られたらどうするの?」
「そんな、ありえない話」
「もしもよ、もしも!」
「受けないよ」
「嘘、フッちゃうってことですか!?」
「てまり、あんた正気!?」
ただの「もしも話」なのに、なぜか二人は私を非難するような顔で見てくる。
「ちょっとやめてよ。そもそも、そんなこと絶対ありえないから」
「いいじゃん、妄想くらい」
「ねぇ?」
「もう…いいから食べよ?」
「はーい」
「あ、そういえばさぁ」
無事話題が逸れたことに、私は内心胸を撫で下ろす。
例に漏れず、私も桜木ファンの一人。新入社員研修の頃優しく気遣ってくれた彼に、コロッと落ちた。
でも、恥ずかしくて何となく周りにはいえない。みんなキャーキャーいいながらも、どこかで芸能人を見てるような感じだから。
あんな人に私なんかが本気になってるなんて、とても話せなかった。
「小桜さん」
ポンと肩を叩かれ振り向くと、そこには桜木君本人。
「さ、桜木君。お疲れ様」
「今日は何食べてるの?」
「日替わりランチだよ。今日、エビフライだったから」
「ふぅん、好きなんだ?」
「うん、好き」
「じゃあ、俺もそれにしよ」
「えっ?」
「ううん?じゃあね」
爽やかに去っていく後ろ姿に、目の前の同僚二人はハートを飛ばしながらキャアキャア騒ぐ。
「ほらやっぱり、てまり先輩に気ありますってあれ!」
「ないでしょ…ただ食べてるもの聞かれただけだよ」
「羨ましい〜、私も聞かれたい〜!」
「私もーっ!」
…聞いてないな、私の話。
レビューを書く