ワンコ系御曹司は私をご所望のようです

・作

大手コンサル会社の庶務として働いていた住原カエデは、ひょんなことから会長の孫である久遠旭に目をつけられた。仕事はできるが社内でも公私混同やりたい放題の旭を毛嫌いするカエデに、旭は「一度だけ抱かせてくれたら二度と近づかない」と約束し…

年々業績は上向き、各種休暇制度その他諸々充実、そして何と言っても将来有望な男性との出会いが豊富。

なんて、今となってはそんな上っ面だけのものにつられて不動産コンサル会社になんて入社したこと、若干後悔してる。

いや、働かせてもらえるのはありがたいんだけどね?給料も休みも充実してることは、特に。

少しでもいい会社に入りたくて、四年間の大学生活脇目も振らずに勉強に明け暮れてきたわけだし。

大学デビューならぬ、社会人デビュー。派手でキラキラした周囲の人達に負けないようにと、質のいいスーツとやたらと高い美容院で髪の毛ツヤツヤにしてきたのに。

華やかな表とは裏腹に、蓋を開けてみればそれはもうドロドロ。女同士の激しい足の引っ張り合い、いい男達の取り合い、嘘だらけ。

男は男で出世争いバチバチだし、見た目が良くてそれなりに金もあれば当然、女には困らないわけで。

この会社に入社して私に言い寄ってきた男はもれなく、彼女持ちか既婚者というクズばかり。それか、同時進行で他にも手出してるやつとか。

そんなこんなでスッカリ夢を打ち砕かれた私に残されたのは、仕事だけ。

派手な格好もキレイなネイルも、仕事には不必要。

そんなものにお金をかける暇があるなら、貯金頑張ってペット可のマンションを買いたい。

入社して今年で早六年目の二十八歳。

もう、若くない。昔はそれなりにチヤホヤされてきた私だけど、今の自分の市場価値はちゃんとわかってる。

「住原さん、この資料まとめてデータ化してもらいたいんだけど」

営業部の男性に声をかけられて、私は黒縁メガネのブリッジを指でクイッと持ち上げた。

「それ、確か去年も同じこと頼まれましたよね?念のためにと、それに今年の新規データも加えたものを既に作成してあります」

「嘘マジ?さすが住原さん、仕事早いねー」

「すぐにPCにデータ送りますので、後ほど確認お願いします」

「はーい」

彼は今時のイケメン。営業部らしい爽やかな笑顔を浮かべた後、ボソッと呟いたのが地獄耳の私にはしっかり聞こえた。

――出来過ぎて可愛くねぇなぁ

「…悪口なら聞こえないように言えっつーの」

私の精一杯の抵抗として呟いた声は、パチパチという自分のタイピング音にかき消された。

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