酔った勢いに身を任せることの怖さを実感しました

・作

上司のボディタッチによるセクハラを理性で耐えきった私。こんな会社、やってられるかー!って、いつものバーでついヤケ酒。でも今日はいつもより酔いの回りが早いみたいで…おかしいな、いつもはこれくらいじゃ何ともならないんだけど、なんだかふわふわする…

「あー、もう!やってらんない!」

私は南里香、この春社会人になったばかりの新人OL。

OLといっても入社2か月の私の仕事と言えば、書類の整理やまとめ、それにお茶出しなんかの雑用ばかり。

だったんだけど、今日は急に休んだ人がいてちょっと忙しかった

だから普段は雑用係の私も急遽、経理のお手伝いをすることになったわけ。

それが最悪で…指導係の係長が背中から抱き着くような体勢で、あろうことか私の手の上からマウスを握ってきて…!

わざとらしく胸や腰に触ってくるんだよね。

こんな典型的なセクハラ、自分が受けることになるとは思わなかった。

しかも間が悪いことにその席は窓際の他の席からは死角になる位置。
忙しさもあって、誰も気が付いてくれなかった。

これもちょっとだけの我慢…と言い聞かせて、仕事が終わるまで耐えた私は本当に偉いと思う。

定時のチャイムがなるなり、鞄を引っ提げてきたのはいつものバー。

このバーは会社の近くにあるにも関わらず、場所がわかりにくい上に、ちょっと入りにくい感じがするからいつも落ち着いた雰囲気が流れている。

良いことがあったときも、悲しいときも、何でもないときだって、まだ入社したばっかだけど何度も訪れた。

「マスター!マティーニ!思い切り強く!」ドアを開けるなり私はそう叫んだ。

幸い、周りに他のお客さんはいない。

私の形相から何かを悟ったであろうマスターは静かに頷いてカクテルを作り始めた。

「そんでぇ…指導をいいことに、いろんなとこ触られて…」週の半ばの曜日のせいか、お客さんは私と2つ空けたカウンター席にいかにも仕事ができそうなスーツをパリっと着こなしたひとがいるだけだった。

このバーで初めて見るお客さんだ。

そのお客さんのことは気にせず、散々マスターに愚痴を言いつつ、いつもより強いショートカクテルを煽った。大丈夫、私はお酒が強いほうだから。

何杯めのお酒になっただろうか、不意にふわっとした心地が襲ってきて、そのままカウンターに突っ伏してしまった。

あー…あの上司はむかつくけど、なんだかいいきもち…私は感覚に逆らわず、そのままふわふわした心地に身を任せていた。

「マスター、チェックを。彼女の分も。」そんな声が遠くで聞こえて、心地よい気分のまま抱き上げられた、そんな気がした。

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