愛をこじらせた一軍幼馴染に初体験を奪われた件 (Page 3)
そして、やってきた運命の日。
「――えいこ」
私は今、恭ちゃんの部屋で、恭ちゃんにのしかかられていた。
どうしてこんなことに、とはいうまでもなく。お酒のせいである。
*****
同じゼミなので、恭ちゃんと話す機会が全くなかったわけではないが、それでも高校のときのような、必要最低限のやりとりしかしないまま、約二年。
私と恭ちゃんはそれぞれ成人を迎えていた。
飲み会の参加にも慣れてきた今日この頃、私に声をかけてきたのは、へべれけになった恭ちゃんを抱えた先輩である。
「送ろうにも、誰も住所知らなくてなぁ。幼馴染って聞いたぞ、後は頼んだ!」
そういって、恭ちゃんをぽいっと私に押しつけて先輩は二次会へ消えてしまった。
今日はゼミの飲み会で、珍しく私も参加していたのだが…とんだ貧乏くじを引かされてしまった。
どれだけ飲んだのか知らないが、恭ちゃんは骨でも抜けたようにくにゃんくにゃんである。
幼馴染だからって、普通女子に男子の介抱押しつける…?
腹立たしいが、確かにそこは幼馴染パワーでなんとかなるところもある。
現に、母に連絡すると恭ちゃんのお母さんに繋いでくれたので、恭ちゃんの住所はあっさり判明した。
恭ちゃんの家は大学に近い、学生向けの新しめのアパートだった。
どこか恭ちゃんの実家と似た匂いのする部屋の玄関に入ったところで、これである。
ふにゃふにゃの恭ちゃんを苦労して玄関の段差に座らせ、背を向けた瞬間、思い切り腕を引かれたのだ。
頭を打たなくて良かったが、私を見下ろしていたのは“男”の顔をした、恭ちゃんである。
「玄関で帰っちゃうのは、いくらなんでもひどくない?」
「お、送ってきただけマシでしょ…ちょっ、どいてよ!」
体勢的にはほとんど押し倒されているといっても過言ではない。
お酒の匂いがする恭ちゃんの息が間近にあって、自分の顔が熱くなるのがわかる。
必死に恭ちゃんの胸を押すが、そこは悲しい男女の体格差。びくともしなかった。
「ねえ、おざきく…」
「やだ。ねえ、英子」
熟れたりんごのような頬に、据わった目の恭ちゃんが眉間にシワを寄せた。
「加藤に告白されたって、本当?」
「え…?」
あまりにも場違いな問いに、抵抗どころか私は動き全てを止めてしまった。
恭ちゃんの顔は、泣くのを我慢してるような、怒っているような、そんな強い気持ちを噛み殺したような表情を浮かべていた。
「ま、まあ…」
それに比べて、私の返事のなんと曖昧なことか。でも、加藤くんに告白されたのは事実だ。断ったけど。
しかし、そのふわっとした肯定で、恭ちゃんの何かが切れたらしい。
「…じゃあ、初めてを奪われる前に奪っとかなきゃ」
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