エッチな気分になってしまって自慰行為を始める私。一部始終を見ていた彼の前でもイクのを止められない…
部屋や衣服に残った彼の匂いが私から理性を奪っていく。自分で自分を慰めるもどこか物足りなさを感じてしまい、頭の中は彼のモノが欲しくてたまらない。突然帰ってきた彼からの執拗な愛撫に身体の奥から欲望が込み上げてしまい…。
「あァ…暇だ…」
普段忙しければ愚痴をこぼすくせに、いざ暇になればそれもまた不満だと言わんばかりに私は呟いた。
実際は暇が不満な訳ではなく、隣にいない存在への不満を暇に置き換えて愚痴をこぼしているのだけれど。
「いっつも忙しい、忙しいってさァ…」
職場の後輩である円が多忙なことは、付き合うより以前からわかっていた。
それでも無理矢理時間を作っては会い、社内恋愛をよしとしない社風のために会社の目を盗んでは情事を重ねていた。
だけど流石に今回ばかりは会うことすら叶わない。
「ってか何で海外よ…ッ」
まだ国内ならば時間を作って会いに行けたかもしれない。
だけど円が出向いているのは日本国内じゃなくて海外…。
円が出張に行ってしまったおかげで、会社に残っている私に与えられた仕事は今までの何倍にも値する。
「まァ…まだね、忙しい分、仕事中は忘れられるからいいんだけどね」
問題はすべてを終えて自宅へと帰ってきた後だ。
付き合い始めてからは私の一人暮らし先で同棲生活を送り、部屋には円の私物が増えてきた今日この頃…。
本人がいないにも関わらず、円の匂いで満たされたこの部屋で生活するのは私にとっては拷問のようだった。
「何でこんなに惚れちゃったかなァ…」
少なくとも以前はこれほどまでに部屋に満たされた円の匂いに気付くこともなく、数日会えないことに対してもこれほどまでに飢餓感を覚えることもなかった。
「それが今じゃあこの有り様だもんね…」
円が出張へ行ってしまってからすでに1ヶ月。
「もう、あたしをいつまで待たせる気よ馬鹿円っ」
腹いせに、ソファーに置かれている円用の買ったクッションを掴み、数回ソファーに叩き付ける。
途端、腹いせとはいえ自ら円の匂いを散布させてしまったことに深く後悔する。
「…はァ、久しぶりに家事でもして気分変えよ」
このまま円のことばかりを考えるよりかは苦手な家事をした方がマシと言い聞かせ、私は辺りを見回す。
見れば洗濯物がいつまでも室内に干されたまま…。
円のシャツが掛かっているところを見ると、恐らく1ヶ月は干されたままみたい…。
「…洗濯物畳むの円の仕事だけど」
本人がいないのならば仕方ないと私は重い腰を上げ、私は円のシャツをハンガーから外す。
「円って、やっぱり細いわよね…」
取り込んだ洗濯物から無意識に取り出していたのは円のシャツ。
身長ははるかに円の方が高いのに、服のサイズは自分と同じではないかと疑いたくなるような細身のシャツ。
「筋肉付いてるのに腕も細いし、指も…」
言い掛けて思わず私は言葉を止める。
それにも関わらず、自分を抱き締める円の力強い腕や、自分に触れた円の細く長い指の感触が脳裏に浮かんでしまう。
「…うわ…何か、やばい…」
情事になれば立場が逆転してしまうほどに溺れてしまう円の指は、自分の身体にどう触れていただろうか…。
思い出すように身体の芯が熱をもち始める。
「……」
手にあるのは幸か不幸か円のシャツ。
そっと鼻を寄せるだけで身体中に円の匂いが取り込まれてしまう。
やだ…私、どうしちゃったの…。
心で呟くも、私の手にあったシャツはいつの間にか包むように自身の身体を覆っており、右手は滑るように下腹部へと伸びていた。
円の口調がドタイプでした。ごちそうさまです。
匿名 さん 2020年5月15日