名前も知らないイケメンのいたずらから大学の空き教室で…♡
大学の喫煙所で見かける学年も名前も知らない、憧れの彼。「彼の泣きぼくろがエロい!」なんて友達と話しているところを本人に聞かれてしまい、「もっと近くで見てみる?」と迫られて…!廊下に誰かいるのに!?空き教室でドキドキエッチ♡
大学の喫煙所。ガラス張りになっているその中には友達と、学年も名前も知らない少し気になる男の人がいる。ガラスをノックしてこちらに背を向けている友達に呼びかける。
「奈緒!韓国語!」
私と奈緒は次のコマで韓国語を履修している。この時間、奈緒は必ず喫煙所にいるから、教室に向かう前に迎えに行くのがお決まりになっていた。煙草の香りを纏った奈緒が喫煙所から出てくる。
「あの人、梨香の好きなタイプでしょ」
中学からの付き合いの奈緒には隠し事はできないし、する必要もない。
「バレた?ちょっといいなーって思ってた。クールビューティーって感じ」
「わかる!黒髪のセンター分けで、色白で目が切れ長で~、目を伏せたときなんかつけまかと思うくらい睫毛長いし」
彼の特徴を指折り数える奈緒は楽しげで、私も釣られてしまう。
「しかも左目の泣きぼくろがエロい!」
2人でキャーキャー言っている間に教室について、大人しく授業を受けた。
*****
ああ、そうだ。今日は奈緒が休みなんだった。
翌週、いつも通り韓国語の授業の前に喫煙所に寄った私は、探している人影が見えないことで思い出した。代わりに彼は今日もそこにいた。眼福眼福なんて思っていると、煙草の火を消した彼が煙草の香りを連れて喫煙所から出て来た。
「エロい?俺の泣きぼくろ」
ふふっと笑った彼に目を奪われて時が止まったような感覚になる。たった今投げかけられた言葉を反芻して、じわじわ顔が赤くなる。
「き、聞こえてたの!?」
「結構声大きかったよ。気をつけて」
目を細めて笑う彼は確かに睫毛が長くて、作り物みたいだなと思った。彼は白くて長い指で私の髪を一束掴み、指を絡めて遊ぶ。
「もっと近くで見てみる?」
「近くで、って」
私の目線の高さに合わせて背を屈めた彼が、鼻先が触れそうな距離まで顔を近づけてくる。
「このくらい?」
「…もっと近くがいい」
名前も知らない相手に、どうしてそんな大胆なことが言えたのか自分でもわからない。多分、星のない夜空を切り取ったような真っ黒い瞳に見つめられて、判断力が鈍っていたんだと思う。だとしても、涼しげに笑う彼が一瞬驚いたような顔をしたのは少し爽快だった。
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