悪魔に願いごとを叶えてもらう代わりに

・作

透子は30歳の冴えないOLで、彼氏いない歴=年齢だ。最近いきなり素敵な彼氏ができたけれど、実はそれは黒魔術で召喚した悪魔と契約した対価だった!契約のために悪魔に差し出したものは、ずっと透子がもてあましていたもので…

透子は小指に光る、赤い石をあしらった指輪を撫でながら深呼吸している。

ここはシティホテルの高層階で、外には都会の夜景が広がっている。

2か月ほど前に偶然出会った透子の勤める親会社社員の、3才年上の男性と付き合い始めた。順調に愛を育んできて、とうとうこの機会がやってきたのだ。

イケメンというほどではないが、柔和で誰にでも好かれそうな容姿をしており、性格も顔の通り穏やかで紳士的だ。

「あんまりにできすぎだわ、ベリアル。本当に私大丈夫かしら?」

透子が顔を上げると、そこには浅黒い肌にカラスのような黒い髪、そして血のように赤い瞳を持つ青年が映る。その青年の頭は2本の山羊のような角が生えている。

「そんなに心配なら手伝ってやってもいいぜ?どうせ俺の姿はあの男には見えねえんだから」

ベリアルと呼ばれた青年は口の端を大きく上げて笑うと、大きな牙が剥き出しになった。

透子はその姿に一瞬怯んだが、なんとか気を取り戻した。

「いえ、結構よ」

つい数ヶ月前まで彼氏いない歴=年齢で、もちろん処女だったことを思い出した。

そして思いあまって黒魔術に手を染めてしまったことを。

*****

「えぇ、まさか、本当に…?」

平原透子はいわゆるモテない女だった。
合コンはもちろん、婚活にも手を出していたが鳴かず飛ばす。処女のままとうとう30歳を迎えてしまった。

童貞のまま30歳を過ぎると魔法使いになれる、なんてふざけた俗説もあるが、女でも同じことが言えるのではないか…なんて冗談半分で考えた透子は、元々凝り性だった性格から悪魔召喚の方法を徹底的に調べて、このような暴挙に至ったのである。

彼女は今、黒色のローブを被り、怪しげな分厚い本を片手に暗い部屋で魔法陣を前に固まっていた。

何故なら魔法陣の上に半裸の男性が現れたからである。

男性は不機嫌そうに起き上がるとキョロキョロ辺りを見回し、それから自分の体を確認した後、透子に向かって口を開いた。

「あーっと、アンタが俺を呼び出したのか?」

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