クールな同僚の甘いおねだり

・作

支店銀行の窓口担当として働いている東野エリは、明るくて接しやすい人気者。ただ臆病で流されやすく、陰で八方美人といわれることも。ある日、自身の在り方に悩んだエリはフラッと立ち寄った居酒屋で一人泥酔してしまう。目が覚めると、そこは見覚えのない部屋。そして、私を優しい眼差しで見下ろしていたのは、同じ銀行で働く同期の柏木京介だった。

「ん…」

肌に触れる、滑らかなシーツの感触。ゆっくりと瞼を開いた瞬間、ここが自分の部屋ではないとすぐに気付いた。

「おはよう。体調はどう?」

不意に声をかけられそちらを向くと、予想外の人物が私を見つめていた。

ノンフレームの眼鏡の奥の瞳が、優しげに細められる。

「柏木、君?」

どうして、柏木君がここに?その疑問を汲んでくれたのか、彼の薄い唇がゆっくりと開かれた。

「昨日居酒屋で偶然会って一緒に呑んでたんだけど、俺に会う前から東野さんかなり酔ってたみたいで。自宅の住所もいえない状態だったから、俺の家で休んでもらったんだけど…」

「…」

何となく。本当に朧げだけどところどころ思い出してきた。

ーー東野さんって、八方美人だよね

支店銀行の窓口で働いている私。昔から周りに合わせることが得意で、自己主張が苦手だった。

万人から好かれるなんて無理だってわかってるけど、嫌われることが怖くて。

そんな性格のおかげで、好きでもない男子から勘違いされたり、女子から「誰の味方なんだ」と詰め寄られたりすることも何度もあった。

大学を卒業後、今の銀行に入社して今年で三年目。ついに今日、女子トイレで私の悪口をいっているのを聞いてしまった。

薄々感じてはいたけど、やっぱりそう思われていたんだ。嫌われたくなくていつも笑顔でいるように心がけていたことが、裏目に出てしまっていたなんて。

人間関係は難しいし、こんな面倒くさい性格の自分も嫌い。

そしてその日、フラッと立ち寄った初見の居酒屋で大して得意でもないビールや焼酎を煽りまくり、気が付けばこの有様。

何の関係もない柏木君に醜態を晒した挙句、とてつもない迷惑をかけてしまった。

「本当にごめんなさい…っ」

自分が着ているTシャツとルームパンツはどうやって…とかそんな疑問が頭をよぎりつつ、私はベッドの上で正座をして勢いよく柏木君に頭を下げた。

その瞬間こめかみに激痛が走ったけど、こんなになるまで飲んだ自分が悪いんだから仕方がない。

「謝らなくていいって」

柏木君は笑いながら、私の側に腰掛けた。

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