肌に残る熱い吐息と、キスマーク (Page 2)

「ご注文はいかがいたしますか?」

「こういったお店は初めてなの…何を飲んだらいいのか…」

「それでしたら…」

スラッと細く長い指先がしなやかに動き、すばやくカクテルを作る。

賀寿美の前に差し出されたのは、ワイングラスに注がれた淡い赤色のカクテルだった。

「こちらは、キールといいます。冷やした白ワインにカシスを加え、初心者の女性でも飲みやすいカクテルかと…」

「そう…いただきます…」

それは、白ワインの苦味とカシスの甘さが絶妙なバランスで溶け合った、癖になりそうな好みの味だった。

「美味しい!ありがとう…」

賀寿美がアルコールに強くないことは、一口目で頬を赤らめていることからも明らかだった。

入店した時の緊張したキリッとした瞳は影を潜め、今はアルコールに酔った、潤んだ瞳に変わっている。

2杯目のキールを飲んだところで、マスターの目つきが変化しているのを、賀寿美はまだ知らない。

「お名前を聞いてもいいですか?」

「賀寿美…」

「賀寿美さん、あなたは男を求めてこの店にやってきた…そうじゃないですか?」

「えっ…」

「あなたの瞳が、唇が、身体が、匂いがそう言っている…」

マスターの綺麗な顔が近づいてきたかと思うと、片手で後頭部を逃げられないようにグッと固定され、唇が重ねられた。

それは、甘く激しく、久しぶりのキスに嫌悪感よりも先に快感が押し寄せる。

「んんっ!」

マスターの舌が口内に侵入し、賀寿美の舌を絡めとる。

何度も角度を変えながら唇を重ねられ、飲みきれなかった唾液が口の端から零れ落ちた。

図星を突かれて、怒りたい気持ちがあったのに、甘美なキスによって、そんなことどうでもよくなってしまったのだ。

「今夜の相手は僕にすればいい。今すぐあなたが欲しい」

「私…マスターより年上だし…成人した子どもが2人もいるおばさんよ…からかわないで」

「年なんて関係ない…賀寿美さんは今夜の相手を探していて、僕はあなたに欲情している。これ以外の理由が必要ですか?」

マスターの顔からは先ほどまでの可愛さは消え、雄の顔になっている。

困惑している賀寿美の唇に、マスターの指が触れ、そのまま口内へと入り込む。

「嫌なら、僕の指を噛みきって、逃げて」

口内をなぞる指先に、賀寿美は甘噛みをし舌を絡めた。

2人は見つめ合い、賀寿美は一心不乱にマスターの指をしゃぶった。

「賀寿美さんの舌がよすぎて、我慢できそうにないよ…」

マスターはそっと指を引き抜くと、看板の電気を消し、ドアに鍵をかけた。

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