セフレな彼の甘い束縛

・作

私はずっと彼・蒼の彼女だと思ってた。だけど彼はそうじゃなくて。私は蒼にとって、ただのセフレ。私は彼が好きだから、セフレとして側にいたくない。彼の元から離れて他の男の人に目を向けようとする私の手を蒼が強引に掴んで…彼の甘い刺激から、私は逃げられない。

「ごめん、お前のこと彼女だと思ったこととかなくて。お互い納得した上での、セフレだろ?俺たち」

違うよ、私はあなたのことずっと、彼氏だって思ってた。

だっていつも「好きだ」って言いながら優しく抱いてくれたじゃない。

あれは全部、嘘だったの?

「アハハ、そっかごめん。勘違いしてたの私だけみたいだね」

問い詰める勇気もなくて、曖昧に笑って誤魔化した。

私の表情を見て、彼・佐渡蒼《サワタリソウ》もホッとしたように頬を緩める。

「瑠衣《ルイ》、怒ってない?」

私の頬に手を伸ばしながら、蒼が呟く。

「怒ってないよ」

怒ってなんかない、ただ泣きたいだけ。

「私たち付き合ってもうすぐ半年だね」って言った時のさっきの蒼の顔を思い出して、思わず拳をギュッと握り締めた。

「瑠衣以上にカラダの相性いい女なんかいねぇよ」

いつもみたいな、甘い甘いキス。

私は目尻に溢れた涙を隠すように、自分から舌を絡める。

彼の興奮したような吐息と、私の体をなぞる手。

ゆっくり目を閉じながら「これが彼との最後だ」と心に決めた。

私は蒼が心から好きだから、私を好きじゃないあなたといるのは辛過ぎる。

だからこのまま、本心を伝えないままさよならしよう。

***

「おい、何やってんだよ」

金曜の夜、賑わう繁華街で私は後ろから腕を掴まれる。

「蒼…」

一ヶ月会わなかっただけ、なのに随分久しぶりに彼の顔を見た気がした。

「誰だよ、そいつ」

私の隣にいるのは、友人から紹介された人。彼はたぶん私のことが好きで、私も彼を受け入れようと思ってる。

「俺からの連絡は散々無視しといて、なんで他の男と遊んでんの?なぁ、瑠衣」

端正な顔を歪めて、蒼は怒りを露わにした。私には、彼がなぜこんなに怒っているのかが理解できない。

「来い」

困惑する私の手首を掴んで、蒼は強引に引いた。

「…んっ、ま、って…んん…っ」

そのまま蒼の部屋に連れてこられて、ドアが閉まるが早いか乱暴にキスされる。

前みたいな優しさはどこにもなくて、蒼はただ夢中で私の舌を絡めとる。

最初は抵抗していた私も、激しいキスに自然と体の力が抜けていった。

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