本能のままに

・作

いつのまにか会社の上司と許されない関係になっていた。今晩もいけないと思いながらも待ち合わせ場所のホテルに向かう。頭ではわかってはいたが、体が、本能が上司である森崎を求めてやまない。今日もあの人の手によって本能がむきだしになる……ただの女になる。

とあるビジネスホテルの部屋の前で大きく息を吸う女がいた。穂香はいけないことだとわかりつつも、今日も誘われるがままやってきた。ドアをノックすると鍵を開錠する音が聞こえた。ドアが開くと白いワイシャツのボタンを緩めて、森崎が穂香の顔を見つめてほくそ笑んでいた。その視線から逃れるように穂香は顔を背けた。

「待ってたよ、おいで」

「……はい」

部屋に入ると、森崎は穂香の頬に手を伸ばしてじっと見つめた。穂香の表情が強張っているのを見て、柔らかい笑みを浮かべた。森崎は同じ会社に勤めていて、穂香の直属の上司だ。年齢もひと回り離れている。

二人がこんな関係になったのは二週間前……仕事の相談という名目で会社の外で二人きりで会った日からだ。深酒をし、いつのまにか二人はホテルで激しいセックスをしていた。酒のせいかもしれない……穂香も森崎に対して、男としていい印象を持っていたからかもしれない。ただ、あっけなく一線は越えた。年齢の割に引き締まった腹や太い腕に包まれると何もかもどうでもよくなったのだ。森崎の左指には金色の指輪が光っている。森崎は既婚者だ。

「何を考えているんだ?余裕だな」

森崎はぼうっと佇む穂香のシャツのボタンを外して、淡いブルーのブラジャーのレース部分を指でなぞる。見下ろす森崎の瞳に欲情の色が見えた。ブラジャーの上から激しく胸を揉み上げると、穂香は立っていられなくなり森崎の腕に掴まった。少し触れられただけなのに、脚に力が入らなくなった。森崎だけではない、穂香も森崎に欲情していた。

「ん……や、森崎さん……はっ……」

「甘い香りがするな、食べたくなる」

森崎は穂香をベッドに横たわらせると、あっという間に着ていたシャツとブラジャーを剥いだ。下半身のスカートとストッキングはそのままだ。森崎の刺すような視線に体が熱くなる。森崎のごわついた手が穂香の両胸を包むと、指と指の間に頂を挟み、まるでピアノを奏でているように動かす。緩急をつけた動きに、穂香は顎を上げて甘い声を出した。

あっという間に乳房は森崎の手に馴染んだ。森崎が子供のように頂を口に含むと、ねっとりと舌を絡ませ、ときに舌先でぐりぐりと押しつぶす。それだけで下半身が疼いて穂香は恥ずかしくて仕方がない。こんなにも感じやすい体だったなんて知らなかった……。

森崎に抱かれるたびに本当の自分はこんなにもいやらしいことを実感した。甘い声で鳴く穂香の唇を口で覆うと、森崎は穂香の耳たぶやうなじを指でなぞる。与えられる甘い刺激に穂香の目尻から涙がこぼれた。

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