慰めをご所望ですか?お客様。

・作

知り合いの女の子がまた失恋したと、わたしの働くバーに駆け込んできた。慰めてほしいと彼女は訴える。あまり女性と性交をしないわたしだが、彼女の要望なら答えない理由はない。心に空いた穴を埋めるため、彼女と身体を重ねる。

ドアベルは、けたたましく鳴り響いた。

「ママァーーーー!!!!」

非常に元気のよろしい女の子の声が店中に響き渡る。

わたしは磨いていたグラスを危うく落として割るところだった。

女の子は、わたしを見つけると猛烈な速さでこちらに走り寄ってきた。

バーカウンターにドンッと手を乗せる。

わたしは、ため息混じりにグラスを棚に戻した。

「ちょっと、お客がいないからってやかましすぎるわよ。ネネちゃん」

「これが大人しくしてられますかよ!聞いてよ、ママぁ」

「わたしママじゃないわよ。雇われのバーテンダーよ。そもそも、ここクラブじゃないし」

ネネはすでに酔っているようで、よたよたと崩れるようにスツールに腰かけた。

机に突っ伏し、ぐすぐすと鼻をすすっている。

わたしはグラスに水に汲んで、ネネの前に置いた。

「もう……。慰めをご所望ですか?お客様?」

「……慰めをご所望ですよ。お客様は……」

「なぁーに?今日はどうしたの?」

ボソボソとネネが答える。声がくぐもって、よく聞き取れない。

「ん?」

「…………ました」

「ん?」

「……と…………れました」

「うん」

「彼氏と……別れました」

「またぁ?」

ネネがムッと眉に皺を寄せる。

「今日泊めてよ。帰るとこない」

まるで人に頼む態度ではないが、つくづくわたしは、この子に甘いと思う。

この子は昔から、つい甘やかしたくなるのだ。

ちらっと彼女の顔を見る。

ずいぶん泣いたのだろう。ネネの化粧はデロデロに落ちてしまっていた。

カウンターのキッチンペーパーを何枚か取り、ネネに渡す。

ペーパーを受け取ると、ネネは勢いよく鼻をかんだ。

追加のペーパーを渡し、頭を撫でる。

「もうすぐ上がりだから、ちょっと待ってて。何か飲む?」

ネネがこくりと頷く。

「ウイスキー、ショットで」

「麦茶、ロックね」

麦茶を飲みながら、ネネはブー垂れていた。

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