すれ違い夫婦の日課

・作

私の旦那さんは平日夜のニュースのキャスター。昼間勤務している私とはずっとすれ違いの生活。朝起きれば彼は寝ているし、彼が起きると私は出勤しているのだ。そんなすれ違いの私たちのお楽しみは、毎週土曜の朝にやってくる。

『こんばんは。今日のニュースをお伝えします』

金曜の23時、画面の向こうにはスーツをピシッと着て真剣な顔をした彼が、難しいニュース原稿を読んでいた。

一方私は、風呂上がりにTシャツ1枚でソファに寝そべり、アイスを食べている。

この相反した2人が夫婦なんだから、不思議なものだ。

 

彼は平日の夕方出勤して帰宅は2時近いことも。

一方の私は朝の通勤電車に揺られての会社通い。

平日はお互い寝顔しか見ていないという、完全なすれ違い生活を、もう数年過ごしている。

ま、私は毎晩ピシッとキメた彼の仕事姿を見るのが日課なのだけど。

はぁん…今夜もカッコイイじゃない。

 

24時、ニュースが終わると、

「おやすみ、ダーリン」

私は画面越しの彼に話しかけてから寝室へ向かう。
これも日課。

ただし、今日は金曜日。
いつもの平日とは違うのだ。

私の胸はドキドキと高鳴り、早くそのときが来ないかと体が熱くなり、なかなか寝つけなかった。

―――

チュッ。チュッ。チュパッ。

なんだか顔周りがくすぐったくて目を開ける。

するとそこには馬乗りになった彼がいた。

「おはよう、ハニー」

チュッ、と軽いキスを落とす。

彼の低い声はドキドキする。
特に、こんなシチュエーションでは。

「しょーちゃん、おはよ」

私は彼の首に腕を回し、今度は自らキスをおねだりする。

すると彼は私に応えるように、柔らかい唇ではむはむと、何度も何度も優しいキスをする。

カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいた。

近所の子供の声もする。

「しょーちゃん、今何時?」

「9時を過ぎたところだよ」

こんな会話をしつつも、私たちはお互いの唇を離そうとせず、あむあむと聞き取りづらい会話をするのである。

どちらからともなく、舌が侵入する。

それを互いの唾液が混じり合うほどに激しく絡め合う。

これが、私たちすれ違い夫婦の土曜の朝。

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