みて、みないで

・作

遠方の恋人に久々のデートをドタキャンされたわたしは、1人、久しぶりの彼の部屋で我慢できずに、自慰行為を始めてしまう。行為の最中彼から電話がかかってきて、自慰をしているとばれたわたしは、自慰の様子を説明するよう求められる。

ペディスドリアンデッキの上を闊歩しながら、わたしは激怒していた。

あの冷淡薄情な彼氏を許しておくわけにはいかなかった。

わたしはスマホの画面を割らんばかりに強く握りしめた。

 

7月、彼が赴任する県で開催される花火大会に行こうよ、と言い出したのは彼の方だった。

わたしと彼は、いわゆる遠距離恋愛で、会える日はそう多くない。

だから誘ってくれたときは、本当に嬉しくて、3ヶ月も前から休みを確保していたのに。

浴衣だって着たのに。

横目に仲睦まじいカップルが通り過ぎる。妬ましい通り越してもはや殺意である。

わたしだって、幸せに裕翔とデートしていたはずだったのだから。

ため息混じりに何度ラインを見直しても、無情にも返答は変わらない。

 

>裕翔!着いたよ!どこ〜?

>亜里沙ごめん!急に仕事が頼まれて行けなくなっな

>え?

>まじごめん部長によばれてるほんとごめん

>ちょっとまって!どういうこと!?

 

……っと、そこからはいくら送っても返事は来なかった。信じられなくて30分はその場で待った。開会の挨拶が流れて、1発目の花火が上がったとき、本当に来ないのだと納得した。

誤字するほど焦っているのはわかる。彼が悪いわけじゃないこともわかる。

だがそれでは、わたしの感情の行方がわからないではないか。

電車の窓から、かすかに打ちあがる花火の音が聞こえた。

しかし、目を凝らしても花火は見えない。

泣きそうになるのを、唇を噛んで堪えているのが精一杯だった。

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