催眠術で犬と化した彼氏に全身を舐められて… (Page 2)
「な、撫でてほしいのかな…よ、よォし…よォし…」
「わんっ」
恐る恐る亮ちゃんに手を伸ばし、柔らかい亮ちゃんの髪に指を通してみる。
すると、どうやら正解だったのか、亮ちゃんは再び嬉しそうに鳴き、床に寝そべるようにして奈々の膝に頭を乗せた。
「か…可愛い…」
「…」
優しく頭を撫でてやれば亮ちゃんは気持ちよさそうに瞳を閉じる。
そんな愛らしい仕草を見せる亮ちゃんに奈々の口は思わず緩んでしまう。
「でも、本当にどうしよう…亮ちゃんが元に戻る方法…あるのかな…」
助けを呼ぶべきであろう…そう考えた奈々は携帯を取り出し、先程出会った亮ちゃんのお兄さんの番号をディスプレイに映し出す。
片手で亮ちゃんの頭を撫でつつ、奈々は携帯を耳にあてる。
「もしもし…奈々、無事か」
「あ、はい…でも何で亮ちゃんこんなことに…」
数回のコール音の後、携帯から亮ちゃんのお兄さんの声が聞こえた。
無事逃げ切った亮ちゃんのお兄さんの声からは先ほどの焦りの色はすっかり消え、奈々を心配するように発した言葉にはどこか楽しそうな色が交じっている。
「それがさ最近俺、催眠術にハマってて…」
「さ、催眠術って…じゃあまさか亮ちゃんが変になっちゃったのって…」
しばらくの沈黙が続く。
恐らく受話器の向こうで亮ちゃんのお兄さんは頷いているのであろう…。
ようやく事の真相が見えてくる。
どんな催眠術を掛けたかはわからないが、お兄さんが亮ちゃんに催眠術を掛け、犬と化してしまった亮ちゃん…。
「戻らないんですか…もしかして…」
「実は…掛けたはいいが、どうやって戻すかわからなくて…」
ならば亮ちゃんは一生このままなのだろうか…。
犬になってしまった亮ちゃんも亮ちゃんで可愛らしく、このままでいいような気もするが、さすがにいつまでもこのままでは困る。
「数時間ぐらいで効果切れると思うんだけど…んで、俺今から彼女とデートだから…亮のこと頼む」
「えっ…そ、そんな…」
これからデートということは、しばらく誰も家には戻ってこないだろう…。
その間こんな状態の亮ちゃんを相手に留守番しなければならないということに奈々は心細くなってしまう。
「なるべく早く帰ってくるから、じゃっ」
「ええっ…お兄さ……あ、切れた」
奈々が亮ちゃんのお兄さんを呼び止める声も虚しく、携帯からは無機質な電子音のみが響いていた…。
「…数時間って…今どれぐらい経ったんだろう…」
結局、留守番を承諾せざるを得なくなってしまった奈々は壁に掛かってある時計を眺めつつ、亮ちゃんの髪をくるくると指で絡める。
一方の亮ちゃんはくすぐったそうに身を捩るも奈々の膝からは離れようとしない。
「…お腹、空いちゃったな…」
いつもならばこの時間、大抵腹を空かせた亮ちゃんたちと晩御飯を食べる時間だ…とぼんやりと思ったけど、相変わらず亮ちゃんは気持ちよさそうに眠っている。
「…キッチンに何かあるかな…」
ふ、と目に入った家の隅にあるキッチン。
そこには冷蔵庫や食材の入った棚、オーブンや電子レンジ、炊飯器が置いてある。
「…ちょっと待っててね、亮ちゃん」
「くう…ん…」
いまだ瞳を閉じる亮ちゃんを起こさぬよう、傍にあった鞄に亮ちゃんの頭を移動させると、奈々は物音を立てないようにゆっくりとキッチンに向かった。
「ううん…ジュースとケチャップと…マヨネーズと生クリームか…」
冷蔵庫の中は誰も補充していないのか、どれも中途半端に空いた物ばかりが並んでいる。
奥にゼリーを見つけたが「兄の」と書かれているので奈々はそれには触れなかった。
「戸棚には…あ、ホットケーキの粉だ…っ」
高い位置にある戸棚に手を伸ばすと、ホットケーキの粉を見つける。
幸運なことに、水で作れるホットケーキ…と箱に書いており、どうやら今すぐに作れそうで安心した。
「そうだ、確か冷蔵庫に生クリームが…」
トッピングはそれにしよう、と奈々は冷蔵庫から生クリームを取り出す。
ついでに下にある戸棚からボウルやフライパン、その他必要な物を取り出した。
「まずは生クリームかな…」
泡立てるのが面倒な生クリームからやってしまおう、と一番にボウルへ生クリームを注ぐ。
生クリームのほんのり甘い香りが奈々の鼻を掠め、さらに空腹になってしまう。
「亮ちゃんにも作らないと…あ、でも犬ってホットケーキ食べるのかな…」
泡立て器で生クリームを掻き混ぜながら、ふと思った。
普段の亮ちゃんならば喜んで食べてくれるであろうが、今は少しばかり状況が違う。
「大丈夫…だよね…うん」
根拠のない答えではあったが、亮ちゃんなら大丈夫だろう…と生クリームを掻き混ぜ続けた。
「うん、これぐらいかな…」
どれぐらい掻き混ぜたのか、ようやく固まってきた生クリームから泡立て器を外すと、奈々は次の作業に移る。
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