力強く繊細な指でもう一度愛を奏でて (Page 3)

さっきの圧倒的な演奏に引け目を感じながらも、弾き慣れた曲を弾いた。

「すごくいいね。素直で感情がこもってて、ピアノが好きでたまらない人の演奏って感じ」

お世辞だろうな、とは思ったけど悪い気はしなかった。

「おっと、そろそろ仕事に戻らないと。ピアノを弾いてるのは、ご主人にも香織にも秘密だからね。じゃあまた」

胸がずきんと鳴った。

慎吾さんが行ってしまうと、その理由が慎吾さんなのか、ピアノなのか、秘密を持ってしまったことなのか混乱しながら、弾ける曲を手当たり次第に弾いた。

それからも、毎週水曜日にはピアノを弾きに行った。

慎吾さんとは会えることもあり、会えないこともあり、会って演奏を聴かせてもらえると、たまらなく嬉しかった。

海辺のゲストハウスには、週末に家族で泊まりに行き、バーの一角にあるピアノを弾かせてもらうようになった。

ピアノだけを心の支えに、1年が過ぎた。

*****

熱帯植物の生い茂るドライブウェイに入り、駐車場に車を停める。

フロントで鍵を受け取ると、バーの方からピアノの音が聞こえてきた。

少し前に公開された映画にも使われた50年代のロカビリーの名曲。

あちこちから陽気な歌声まで聞こえてきて、映画さながらの盛況ぶりだった。

心臓が早鐘を打つ。

はやる心を抑えられず、バーに走っていくと、あの日と変わらない楽しげな様子で慎吾さんがピアノを弾いていた。

曲が終わり、拍手と歓声が沸き起こる。

「菜々さん、久しぶり。菜々さんのピアノ、聴かせて」

夢にまで見た愛しい人を前に、指先から想いが溢れる。

弾き終えて、目を閉じると、唇に柔らかいものが触れる。

慎吾さんの吐息と匂い。

抱き締められ、唇を貪り、舌を激しく吸い合って、身体の奥から湧き上がってくる欲望を解き放つ。

*****

5年前のことは今でも鮮明に覚えている。

平和な家族の週末になるはずだったあの日のこと。

夕暮れの浜辺で、子供たちの砂遊びを見ながら、そろそろカクテルをオーダーしようかと思っていた時に、夫のスマホが鳴った。

仕事のトラブルで、行かなければならないところがあると言って、夫はゲストハウスを出た。

1年の間に、休日に呼び出されたことなんてなかったし、夫が独身の同僚とつき合っている噂は聞いていた。

よく考えたら、休日は昼前から飲んでいる夫が、その日は朝からまったく飲んでいなかった。

程なくして、遅くなりそうだから今夜は家に帰るという連絡があった。

何も考えないように、子供たちに夕食を食べさせ、寝かしつけた。

眠れなかった。

ひどい気分でバンガローを抜け出し、バーのカウンターに座った。

突然、不穏な感じの黒鍵の音が響き、短調のアルペジオが続く。

振り向くと、慎吾さんがピアノを弾いていた。

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