まゆのすべて (Page 4)

シャワーを済ませたまゆはいつも通りのまゆだった。
何事もなかったかのように着替え始めた。

俺たちは手を繋ぎながら駅までの道を歩いた。
他愛もない会話をしながら駅に着く。

まゆと俺は反対方向のプラットホームに立った。

正面に俺に笑いかけるまゆがいる。
俺はまゆに小さく手を振った。

「じゃあな…」
と心の中で呟きながら…。

まゆは…あの女は危険だ!
俺の中の何かがブレーキをかけたんだ。
これ以上いたら破綻すると。

こうして俺はまゆと会うことをやめた。
自分の口から出た『愛してる』という言葉に逃げたくなったから。

まゆの真っ直ぐな目とまゆから聞かされた『愛してる』に期待してしまうから。

俺はまゆを愛することから逃げたのだ。

『既婚者同士のセフレ』という温い場所から不倫に発展してしまうのが怖かったのだ。

まゆが旦那の元に帰るための電車に乗る。

電車の中から笑顔で手を振るまゆの姿を俺は見つめた。
それがまゆとの最後の逢瀬だった。

まゆ…今頃お前は誰に抱かれているんだろう…。

今でも時々思い出す。
そして淫乱なまゆを抱きたくなっては胸を締め付けられる。

Fin.

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