淫らな復讐に堕ちる私…! (Page 2)
「部活が終わったら夕飯でも食べに行かない?」
「家まで車で送ってあげるよ」
「週末に遊びに行かない?」
先輩は私の好みではなく、誘いにのる気はなかった。
だから、声をかけられる度に、失礼のないように言葉を選び、やんわりと断っていた。
でも彼はしつこかった。
半年以上もアプローチされ続け、私は部活に行くのすら苦痛になってきた。
ある日彼は、コンサートのチケットを差し出してきた。
「有名なビッグバンドなんだよ。チケットを取るのに苦労したから、一緒に行ってくれないかな?」
そのとき私の中で、なにかがブチっと切れた。
「いいかげんにしてもらえませんか!?こっちがずっと迷惑に思ってるの、なんでわかってくれないんですか!?」
自分でもビックリするほどの大声だった。
もちろん、先輩もビックリしていた。
しかし、もっとビックリしたのは、他の部員たちだった。
先輩が私を口説いていたことが、その瞬間に、みんなにバレてしまったからだ。
先輩は真っ赤になり、慌てて荷物をまとめて帰ってしまった。
そして、それ以来二度と部活には現れなくなった。
私はせいせいしたが、先輩を頼りにしていた、特に金管楽器の部員たちは先輩の不在を残念がり、私を責めた。
「葉月ったら、あんなひどい言い方しなくてもいいのに」
「先輩いい人なのに、かわいそう」
一部で悪者になってしまった私は、卒業まで居心地が悪かった。
それでも部活を辞めないでいたのは、吹奏楽が本当に好きだったからだ。
その「かわいそうな先輩」が、三田友幸だったのだ。
今の三田課長である。
この会社に派遣された初日、十数年ぶりに三田先輩に再会して、どれだけ驚いたことか。
しかし三田課長は冷静だった。
「久しぶりだね」
とひとこと言っただけで、懐かしんだりもなじったりもせず、淡々と接してきた。
しかし、仕事上の態度は明らかに違った。
恨んでいるのが見え見えだった。
*****
「あ~あ!なんでこんなとこに来ちゃったんだろう!」
誰もいない資料室で、わざと大きな声を上げて憂さ晴らしをした。
資料室とは名ばかりの、薄暗くて狭い倉庫のような部屋だ。
私は何も悪くない。
それでも三田先輩に恥をかかせたという罪悪感が、どこかに残っていた。
面倒な残業はその罪滅ぼしだ。
そのとき、フッと電気が消えた。
やだ!停電?
ただでさえ薄暗いのに、真っ暗になってはたまらない。
手探りで机の縁をなぞりながら、ドアを開けようとしたとき、何かにぶつかった。
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