ソノ年下男性、甘イ棘アリ
一彦から別れ話を切り出され店を出た私は、初めて逆ナンした。背が高くてスーツが似合う年下のアキラくん。「カオルさん、自分のこと可愛いって思ってるでしょ?」という彼はタクシーに乗ったらスカートを上げて触ってきたのに、ラブホテルに着くと冷たい態度で突き放してくる。アキラくんの棘は私の気持ちいいとこを刺激する…。
久しぶりに会えるからって、浮足立っていた自分に苛立った。
未読スルーになってたのに、いきなり『会える?』なんてメッセージを真に受けて、新しい服と下着に身を包んで、いつもの場所に行った。
遅れて行って一彦の姿を見たら、いつもみたいに腕を絡ませたくなった。
腕に触れたときの、一彦の醒めた目。
悔しくて、手を引っ込めた。
「カオルのこと見たいから」って、いつも対面のテーブルを予約してた一彦。
いつもの店で、一彦のあとをついてったら、カウンターだった。
「好きな人ができたから、別れてほしい」
悪い予感はずっとしてた。
注文する前にいった一彦に腹が立って、水をかけて店を出た。
私、好みでもない一彦のどこが好きだったんだろう?
涙がじわっと溢れ、アイメイクが崩れるのも腹が立つ。
遠くから背の高い男性が歩いてくる。
スーツ姿が決まってて、カッコいい。
「失礼ですけど、予定ありますか?」
その男性に声を掛けた。
男性に声を掛けるなんて生まれて初めて。
「今夜ですか?」
目は優しいのに、とげとげしい口調だった。
「今からどこか飲みに行きませんか?」
「いいですよ」
「本当ですか?」
「えっ?断ると思って、声掛けてきたんですか?」
私は上を向いて、この人の目を見て頷いた。
話し方に棘があって断られそうなのに、顔は微笑んでる。
優しい目で私を見て、手を握ってきた。
「夕食終わりました?」
「いえ、まだです…」
自分から声を掛けたのに、何も決めてなくて、恥ずかしい。
「俺、この辺詳しくないんですよ。タクシー拾いましょうか?」
「遠くまで行くんですか?」
「そんな遠くないですけど…ダメです?」
その人は急に足を止めて、握っていた手の力を緩めた。
あ、この人も私から離れてく…。
私は、その人の手を握り返していた。
「あの、名前、聞いていいですか?私、カオルです」
「アキラです…カオルさん、年上だと思うけど…自分のこと、可愛いと思ってるでしょ?」
「え?…」
さっきよりも、棘のある口調に、驚いて顔を見上げると、優しい顔して笑ってる。
「俺、今日ついてんな…カオルさんみたいな人、すげー好きなんだよなぁ」
アキラくんは、そういって、私の手を力強く握り返して、タクシーを停めた。
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