絶倫ホストはNo.1~本カノ千里との淫らな夜~

・作

No.1ホストの匠と同棲している千里。千里は、「好き」って言ってくれない匠を信じられなくて…。毎日不安な日々を過ごして揺れる千里に、毎晩のように沢山の愛を注いでいる匠。2人の糖分高めで淫らな夜をどうぞ。

本当は言葉が欲しい。
「好きだよ」って言って欲しい。
でも、嘘をつかれるのは嫌なんだよね。
だから言わない、求めない。

約束のない関係は優しくて残酷だ。
先の見えない不安は私を随分大人にしてくれたと思う。

「いってらっしゃい❤」
今日も言葉の代わりにギュッてする。
(このまま匠君が折れちゃったら、ずっと一緒にいてくれるかな)
なんて馬鹿みたいなこと考えながら。

2人で選んだお家も、2人のためのベッドも。
私の心を満たしてはくれなかった。

夕食の買い物をしに外に出た。
夜風が少し冷たい。

新宿の街を歩いていると、音楽を流すトラックが通った。
引き延ばされて何倍にもなった大きな匠君と目が合う。
「不動のNo.1」「売上1億円over」
そんなキャッチコピーが目に留まる。

匠君は言わないし、私も聞かない。
でも、一緒に暮らし始めてから、1度もNo.1を譲ったことが無いのをトラックのお陰で知っている。

信号待ちで停まったトラックに、女の子達がスマホを向けた。
「やっぱり匠はイケメンだよねぇ。写真と実物のギャップに萌える」
「そうそう♪この間なんてさぁ…」

イヤホンを付けて顔を背け歩き出す。
あの子たちは、彼のことを何処まで知ってるんだろう。
華奢で、可愛くて、若い。

出会った時の匠君は新人で、一生懸命でほっとけなくて。
初めてのイベントでタワーをした時には、お礼に手紙を書いてくれたっけ。
宣材写真で着る服を一緒に買いに行ったり、2人で他店のナンバーを研究したり。

「新人戦優勝」「グループ史上最速幹部」
いつしか私は店から足が遠のき、イベントや締め日に行くだけになった。
増えていく肩書を支えた姫達が眩しかったから。

「お金は要らないから。千里にも一緒に居て欲しいんだ」
一緒に住み始めてから私は一度もお店の支払いをしていないけど。
匠君の言葉を信じ切れずに、私が使ったはずの金額を貯金している。
いつ「ツケ払ってよ」って言われるか分からないなって思うから。

*****

「千里、ただいま」
匠君の声で目を覚ました。
リビングでテレビを見ていた筈なのに、いつのまにかウトウトしてしまったらしい。

「ん…何時?」
「2時過ぎかなぁ。千里から返信なかったから、早く帰って来たんだよ」
「ごめんね、寝ちゃってたみたい。お疲れ様でした」

匠君から、良い匂いがする。
彼はいつも帰宅すると、シャワーを浴びるまで私に近付かない。
そういう配慮も含めてNo.1なんだろうけど。

「千里?…ちぃちゃん?ほらおいで」
「はぁい」

匠君が寝室でだけ私のことをちぃちゃんって呼ぶのは、誰にも言わない2人だけの秘密。
ちぃちゃんって呼ばれると、匠君が私だけのモノになる気がして嬉しいのは、私だけの秘密。

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