イケメン社長はシンデレラバストがお好き

・作

とあるランジェリーブランドのモデルに選ばれた佐倉莉音(りおん)は撮影終了後、ブランドの社長である伊勢崎豊から声を掛けられる。控え室で次の仕事の話を…とのことだったが、社長から提示されたのはセクシーランジェリーの数々。これを着た姿を見せてくれればと、莉音は枕営業の誘いを受けてしまい…

「じゃぁまずは、いくつか軽くポーズとって。自然体でいこう、自然体」

ここは都内某所の撮影スタジオ。ランジェリーモデルとしてオーディションに合格した私は、とあるブランドの製品を身にまとってカメラの前に立っていた。

「背中側もね。そうそう、バックのデザインがよく見える角度でお願い」

カメラマンや下着のデザイナー、ブランドの企画担当者など。数名に囲まれて指示を受けながら、私はめまぐるしくポーズを変えてオーダーに応じていく。モデルとしての撮影の仕事はそれなりに経験があるものの、下着姿というのはこれが初めてだった。

「今度はソファに座ったりしてみようか」

お世辞にも胸が大きいとはいえない私だが、今回のブランドでは新しく小さめサイズの展開を始めるとのことで、起用が決定した。いわゆる「シンデレラバスト」などと表現されるサイズ感。華奢さをカバーしながらも、変に寄せたり盛ったりすることのないデザインには好印象を抱いた。

「じゃぁ次のデザインに着替えお願いしまーす」

撮影は順調に進み、定刻よりも少し早いくらいに終了となった。私はモデル事務所には所属しているものの、専属でマネージャーが付くほどの売れっ子ではない。この日もマネージャー社員は、別のスタジオで撮影している他のモデルと私の掛け持ち状態。しかも向こうの撮影が長引いているとのことで、しばらくはどこかで時間を潰す必要がありそうだった。

「ちょっと、いいかな」

そんな折に声を掛けてきたのは、このランジェリーブランドの社長──伊勢崎豊さんだった。爽やかで清潔感のある顔立ち、浅黒い肌にスラリとした長身。元は老舗と呼ばれるような下着メーカーから、若者向けランジェリーブランドを立ち上げて展開。テレビや雑誌にも多数出演する、有名社長だった。

「佐倉莉音さん、だったよね?」
「はい、そうです。本日は素敵なお仕事に携わらせていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。それで…この後、少し時間あったりするかな?」

私はマネージャーの迎えが来るまで待っていることを伊勢崎さんに伝える。どうやら、次の仕事の打診を…という雰囲気だ。本来であれば事務所を通してとなることだが、話を聞いてもらうだけでもいいからと言われた私は、社長の後について控え室へと移動した。

「実は今度、友人が新たにブランドを立ち上げることになってね…」

そう言って伊勢崎社長が机の上に並べ始めたのは、実にセクシーなデザインの下着たちだった。シースルー、オープンクロッチ、マイクロビキニ等々。今日の仕事とは異なる毛色の、いわゆるアダルト路線の商品だ。

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