ボディーガードは本日も優秀で

・作

財閥令嬢の茜は親の子会社を引き継ぎ、25歳の若さで社長にのぼりつめた。彼女には15歳の頃から身の回りの世話やボディーガードをしている中野が常に付き添う。しかし、今日はたまたま中野が不在な中接待に行き、変な液体を飲んでしまい…。

「では、今日の会議はここまで。次回、それぞれ提案資料をお願いします」

「はい、社長。引き続きよろしくお願いいたします!」

深々と頭を下げる、部長クラスの部下達。

書類のたくさん入ったファイルを手に持つと、自室の、社長室へと足を運ぶ。

私は、世間で言うところの、財閥令嬢。

父の子会社を引き継ぎ、わずか25歳にして社長に上り詰めた。

親会社は宝飾関係のため、世界各地から輸入したダイヤを自社の技術で磨き、アクセサリーに仕立てる。

私が社長に就任している子会社は、その輸入ダイヤをどこから輸入するのか、いかに安く輸入するのかを調整する会社だ。

そのため、闇取引などにも巻き込まれることが多く、私は小さい頃から常に護衛をつけられている。

この会社を継ぎなさいと言われた、15歳の頃から。

「お嬢、もう18時を過ぎました。今日はこの後ゼット社との接待があるので、もうお支度を」

少しウェーブのかかった明るい茶髪に色白の肌。

190センチ近い身長と、スーツを着ていてもわかる、日々鍛錬で鍛えられた逞しい体。

一見ホストクラブにいそうな、遊び人のような見た目なのに、仕事ぶりは完璧で。

そんな私のボディーガードの中野は、1日のほとんどの時間、私のそばにいる。

「今日は接待だし、前回お会いした方と一緒のメンバーだから、中野も少し勤務交代して休んだらどう?」

もう39歳にもなるというのに、いつも1人の時間もなく、仕事に勤しむ彼。

ほぼ家族のような存在で、私にとってはなくてはならない存在だが、たまには羽を伸ばしてほしい。

「そうですか…。では、お言葉に甘えまして、今日の接待の運転手と付き添いは、上田にお願いすることにします」

すぐに、スマホから代打の上田に連絡を取り合う中野。

私は、その様子を見て微笑むと、接待に向かうための身支度を始めた。

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