両手にしごできイケメン。
彼氏と喧嘩別れしてしまったひとみはその寂しさを紛らすために、同期の英政と泰彦を誘って居酒屋で3人で飲んだくれていた。酔った勢いで2人をラブホテルへと連れ込んだはいいものの、どうやって誘惑すればいいのか悩んでいたら…?
「うがぁーっ!今思い出しても腹が立つ!なんて言ったと思う?アイツったらね…」
「おおっ!早速今夜もはじまりました『ひとみの別れ話、史上最悪の彼氏のエピソード』のお時間です!」
「確か前回の元カレは『小ウルサイお母さんみたい』だったか?」
「2人とも!余計なこと言わず最後まで黙って聞いてよぉ!」
「「ハイハイ」」
英政と泰彦は私の同期で、何かと理由をつけては3人で呑んでいる。最近はもっぱら私の破局を肴にしている。今回も付き合って3ヶ月たたないうちに喧嘩別れした彼氏の話を2人にぶち撒けるため、仕事を早々と終わらせて行きつけの居酒屋に集まった。
「うんうん、そりゃあひとみは悪くない。俺はそう思うけどね。泰彦はどう思う?」
英政は枝豆を咀嚼しながら大袈裟に頷いた。話をふられた泰彦はジョッキに残っていたビールを飲み干してから、
「ひとみが仕事熱心なのはわかる。でも恋人との時間も大切にしないと、フラれてしまうのは仕方ないだろう」
「あーもぉ〜!痛いところを突いてやるなよ!なぁ!あっはっはっ!」
英政は大分出来上がっていて、大笑いしながら泰彦の背中を叩いた。泰彦はそれを気にしない様子で、何杯目かわからないジョッキのおかわりを店員に注文した。顔にはでてないが、彼もかなり酔ってるはずだ。
「アンタたちの部署にいい男いない?紹介してよ」
「「ウチの部署にひとみと続く根性があるヤツはいない」」
「はぁ〜…どこかに私と対等に渡り合える男性はいないのかしら…アンタたちみたいにさ…」
「いないぞ。俺らくらいだろ、そんなの」
「そうだな。他の男にひとみは荷が重い」
「うわっ、辛辣ぅ…」
じんわりと涙が出てくる。ため息をつきながら、飲みかけのジョッキに手を伸ばす。酒を呑まずにはいられない。喧嘩して別れたとはいえ、縁があって付き合うことになった人との別れは辛い。そんな時は1人で過ごしたくなくて、いつも英政と泰彦を呑みに誘う。例え繁忙期でもどうにか都合をつけてくれるし、茶化しながらも私の愚痴に一晩中付き合ってくれるこの2人には感謝しかない。
『待てよ、この2人…私の希望する条件に当てはまってるんじゃ…?』
なぜ今まで気付かなかったのだろう。2人となら既に信頼関係が出来ているし、互いの趣味嗜好も知り尽くしている。職場は同じで勤務形態にも理解がある。オマケに同期の中どころか社内で一二を争うしごできイケメンだし、2人とも今はフリーだったはず…。
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