甘噛みを受けながら大きなあなたを受け入れる (Page 4)
不自然な和歌子の敬語にくすりと笑いながら、永田は手早く数字を埋め、グラフを作成する。
「どうですか?」
永田のことなんて一つも意識していなかったのに、女の冷めやらぬ熱が、既に永田の声に濡れている。
懸命に仕事モードへ舵をとりながら、数字をダブルチェックし、和歌子は微笑む。
「プレゼン中に気づいたら、めちゃくちゃショックだったとおもう。ありがとう、永田」
「こちらこそ、お邪魔しました」
永田はデータを上書き保存し、ノートパソコンを片付けながら安堵の笑みを浮かべる。
「あ、あの」
「ん?」
「ビール、ありがとう。景気づけに乾杯だけしない?」
この言葉を和歌子はすぐに後悔することになる。
*****
数分後、トイレを借りた永田が、手を拭こうとして手にしたタオルから、バイブレーターが転がり。
「藤沢…いいにくいけど…。こうすれば止まるよ…」
と冷静に電池を抜いてくれたのだ。バイブレーターが置かれたコタツを挟み、和歌子と永田は正座している。
「さっきの音…これ?」
和歌子は黙って頷く。
「そういう…最中…でした…」
「それは…本当…俺…お邪魔でしたね…」
落ち着かぬ様子で、缶ビールに口をつける永田。
「や、なんていうか眠る儀式…っていいますか…」
羞恥に口籠る和歌子。
「あ…うん…。当たり前だけど…女の子も、するんだね…」
「女の子、って」
「女の子、ですよ」
沈黙が二人を包む。和歌子は俯く。
「ごめんね、変なもの見せて」
「いや…。変なこというと…」
再びの沈黙。和歌子が永田の言葉を待ち受けて見つめる。
「もっと…みたい…知りたい…かも…」
「えっ…」
「好きな女の子が…どんな風に…感じるのか。してるのか」
「好き?」
「好き。あ、抱きたいから、ってだけじゃなくて。って信用ならんね。忘れて」
永田がビールを飲み干す。喉仏が大きく動く。
「忘れ…ないで…」
和歌子は、缶ビールを持つ永田の手に、自分の手を重ねる。また永田の喉仏が大きく動く。永田はビールを置き、膝をついて和歌子側に身を寄せる。
「好きだよ、藤沢」
私も、と和歌子が答える間もなく、唇に唇が重なる。啄むような軽い触れ合いを予想していた和歌子は、狂おしいキスに酔いながらも、身を任せる。
「ハァ…ハッ…」
荒い男女の息が夜に響く。
「教えて…?みせて?俺に」
すっぽりと、和歌子の背中を包み込むように座りながら、背後から永田が要求する。
永田の指は和歌子の髪を掻き分け、永田の舌は和歌子の耳を舐め、息を吹きかける。
「入れるよ?」
永田の言葉が、先程抜いたバイブレーターの電池のことだと気づき、和歌子は先走る己に赤面する。
永田の性器の状態を布越しに、和歌子の臀部は察知してしまっている。
猛る逞しい幹は、優しげな永田のモノとは思えぬが、確かに主張している。
ヴヴヴ…。
永田のそれだと想定し、淫らだと自認しつつも、バイブレーターに和歌子は舌を伸ばす。
素敵でした。
肝心なシーンのみならず、2人の会話からぎこちない関係や互いを大事に想う気持ちが伝わってきて良かったです。
ななし さん 2021年5月4日