恋煩いの溝鼠

・作

呼ばれれば会いに行く。ずっと一緒にいた。幼馴染というポジションを利用して、会えばセックスを繰り返す。恋人がいる相手。来月彼女は結婚する。せめても、このずるずると続く関係を、せめて俺のせいにしてほしい。

呼ばれたから会いに行く。
ただ、それだけ。

「久しぶり」

顔を上げれば見慣れた顔があった。

「車、駐車場に停めてあるから」

「うん」

大通りを堂々と、手をつないで歩く。
でも、この人は俺の彼女ではない。

*****

外の冷たい気温と、車の中の温度の差で窓が曇る。
車の中で座席を倒して、キスをする。

「なんで、泣くわけ」

「あ、違う、きょうはそんなっつもりじゃ…っ」

この人には、彼氏がいる。
来月結婚する、婚約者がいる。

「だ、だって」

ストッキングの独特の触感と太ももの弾力を楽しむように指を這わせる。

「や、やめてよ」
抵抗しようとする全く力の入っていない細く白い指。

彼女の怯えた表情に、冷たい目線を落とす。

―俺は知っている。
彼女がワザと、加虐心を煽っていることを。

指を絡ませて、冷えた指先にキスをする。
見つめれば、目を背ける。

「じゃぁ、なんで俺のこと呼んだの?」

無言で俺を見つめる彼女の表情は明らかに、動揺していた。

貴女の涙のワケを、俺は知っている。
その理由を作っているのが、俺だということも、わかってる。

「何も考えなくていいんだよ。俺のせいにしておけば」
口を塞ぐように、キスをする。
むさぼるように歯の裏を舐めて舌をからめる。

―――この感覚が好きだ。
抵抗されて、やっとこじ開けて、舌を絡めて応えてきた瞬間、この勝利の感覚が。

彼女の柔らかい胸に触れる。
「んっ」と小さな声が漏れる。

「胸、見える服じゃん。やる気満々だったんじゃないの?」

目を大きく見開いて、涙を溜めた瞳が愛おしい。
いじわるを言えば言うほど正しく反応してくれる彼女が愛しくてたまらない。

胸元の開いた服に手をかけ、下着をずらし露わにさせる。
「…っ」
胸の突起に舌を這わせて、チロチロと舐めあげる。
唇でちゅっと音を立てて、口に含んで舌先で転がすと、甘い声が漏れる。

反応する姿が嬉しくてもう一方の胸にも手をかける。
指でつまんで転がすと、唇を噛んで、感覚を逃がしている表情がますます俺の興奮を助長させる。

「やっ」
タイトスカートの中からストッキングごしに彼女の秘部へ触れる。
指で少しなぞりあげてやると、彼女の足が逃げようと動く。

「いいの?やめるよ」

彼女は俺を拒めない。
寂しさを埋める道具だとしても、俺を利用するしかない。
恋人とケンカをすれば必ず俺のところに来る。最低なことをしているとわかっていても止められない。
幼馴染という立場を利用してでも、彼女と身体の関係だけでも、繋ぎとめておけるこの時間が、俺には必要で大切だった。

「今日呼んだのは、こういうことするためじゃないの?」

「ちが…っ」
秘部をストッキング越しに擦ると、じんわりと温かく湿る。

―余裕に見えるように、紳士らしく。でも、冷たく。

「私、来月結婚するんだよ」

彼女のまっすぐな視線が俺を捕える。

「知ってる」

俺は大人になったんだよ。
だから、もう貴女に心を揺さぶられない。

「あの男にはどうやって、誘うの?」

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