無条件幸福 (Page 3)
「柚は、すっげぇ猫かぶってるんだなぁ。本当イケるんだ」
心底楽しそうな石野さんの声。柚…?柚香のことだ。ソファに横たわらせてもらっているので、目が覚めたと気付かれないように、軽く寝返りを打ち直す。
「次、あの本棚に隠してあったブランデーいただいていいですかね?」
「いいよ、開けて。戦友だからな、柚は」
「はいっ」
…戦友?グラスの中で氷が回転する音がする。私の頭は未だどうにも回転してくれそうにない。
「葵も、本当はブランデーもウィスキーも好きなんですよ」
「そうか、残念。次だな。今日はビールを飲ませちゃったのがまずかったかな」
「や、葵、緊張したんだと思いますよ。普段は浴びるみたいに飲んでもヘラヘラしてますから」
「柚からそう聞いてたからさぁ、次回楽しみにしとく…寝てるかな?」
私の話題。つい背中がぴん、と張り詰めてしまう。
「ソファーじゃなくてベッドに運んであげたいけどね。ベッドだと、ちょっと俺、暴走しそうだからさ、我慢しとく」
暴走?我慢?
「酔ってるから?葵が?」
「そー」
「恭介さんって臆病。私、寝込みでも襲っちゃいますよ?」
恭介さん、と蠱惑的に石野さんを呼ぶ柚香の声。わー!わー!待って。親友の情事を見てしまうの、私!?
「葵を」
えっ!と驚く間もなく。私の耳朶は、柚香の唇に啄まれる。とても静かな動きでソファに寄ってきたのだろう。仔猫のような柚香の肢体が、私の背中に圧をかけている。ふわりと、柔らかく小ぶりな乳房が私の背にあたる。
「いい眺め…」
「ふふっ、いつまで強がっていられますかね?恭介さんが葵にしたいこと…私、しちゃいますよ?」
「双葉さんの身体が辛いでしょ、今日は。同意が得られる状況じゃないし」
「抵抗がなければ同意と見なす、のは乱暴ですもんね」
言葉と裏腹に、柚香の小さな手が私の左の乳房を包む。それから背中を手が這い、ニットの中に侵入してくる。思わず、ぴくりと動いてしまう。
「葵…」
愛おしむように、柚香が私の髪を撫でる。
「ふふ、ブラを緩めてあげただけですよ?苦しいかなって」
「ふーん」
「もっと、葵を楽にしてあげたいと思いません?」
「やっぱりソファじゃ辛そうか」
きゃぁあ。寝たふり!固く目を閉じ直す。でも、軽々と石野さんに抱きかかえられてしまい、お酒以外の赤みが顔を染めてしまっているに違いない。
「寝室に、グラス運びますねぇ」
「ん」
柚香の遠い声に頷いた石野さんが、ベッドに私を置きながら私の瞼に唇を落とす。ピクピクっと、瞼を動かしてしまい、私は誤魔化しきれずに目を細く開いた。
とてもえっちでよかったです
まつばやし さん 2021年3月10日